YouTube100万再生連発の日本人女性、アメリカで人気の意外なワケ
● ステレオタイプを裏切るぶっちゃけトーク この動画を初めて見た人も多いだろうが、彼女のステージショー動画の多くが100万回単位で再生されているほどの人気だ。コメント欄では、「ウケるために日本語訛りを真似ているのでは」とか、「カナダ生まれのネイティブに違いない。時々うっかりしてネイティブの発音になるぞ」「それがどうした。面白ければいいんだ」といった、英語ネイティブ達の論争が起きている。 日本語訛りだけでなく、表情や仕草、笑い方、服装、長い黒髪といった特徴から、「おとなしくて従順」「愛想が良く礼儀正しい」「控え目で優しい」「可愛らしくて無邪気」といった、外国人が抱きがちな日本人女性のステレオタイプをYumiさんは想起させる。 そんな彼女が、外国で暮らす日本人女性の本音を、ステレオタイプを裏切るぶっちゃけトークで語っているのが人気の理由だ。この演出のために、日本語訛りは大きな効果がある。 実際に、「これを見たら日本の女性のイメージが変わりました。めちゃくちゃ面白い」「自分も1人のアジア人として、あなたがステレオタイプと戦っているのを見て、素晴らしい気持ちです」といったコメントも多い。 一方で、こちらのインタビュー動画を見れば分かるが、実はYumiさんの英会話レベルは相当に高い。 .article-body iframe {max-width: 100%;} しかし、彼女は自分の英語の発音を、あえて「誰にでも聴き取りやすいレベルの日本語訛り」にしているというわけだ。 Yumiさんは俳優活動の中で発音矯正を勧められたこともあったが、「完璧な英語を話すことで自分が誇りに思っていること、つまり日本人であることを隠しているように見える」と考え、訛りを維持することを選んだそうだ。また別のインタビューでは次のように述べている。
My Japanese accent works because that is something that makes me unique and it makes me stand out. This is how I talk. This is my authentic way of speaking. So I feel, like, really free… (私の日本語訛りが効果的なのは、訛りが私をユニークにして目立たせてくれるものだからです。これが私の話し方なんです。本当の自分の話し方です。だから、とても自由に感じられるんです…) このように、彼女を見ていると、「英語を通じて自分らしさを伝える上で、日本語訛りも大きな武器になるのでは?」と思えるようになる。 ネイティブのような発音を目指すことも悪くはないが、それ自体が目的になってしまうと、「英語を自分の人生の中でどう位置づけるのか」という本質を見失いかねない。 また、英語はツールに過ぎないという考え方もあるが、それならば音声の同時通訳機が進展すれば英語のスピーキング学習は不要になるだろう。しかし、機械では、その人の特徴や雰囲気、訛りも含めた話し方を完璧に再現することはできないはずだ。 ● 社会の問題点や女性の生きづらさを語る Yumiさんのコメディが新鮮かつオリジナリティにあふれている理由は、社会の問題点や女性の生きづらさをユニークに語りつつ、返す刀で北米における日本人女性への偏見を訴えていることだ。日本のお笑いではあまり扱われない社会派ネタ、スタンドアップコメディの定番である人種ネタ、そして下ネタも真正面から扱っている。 Yumiさんのような人が日本からたくさん出てきて海外で活躍すれば、日本人への理解や認識がどれだけ深まることだろう、と筆者は思う。 だが、それには日本を飛び出す勇気がまず必要だろう。彼女はインタビューで日本に対して、「ほとんど全ての人が同じような考え方をする。コンテナに閉じ込められて窒息しているように感じ始めていた」と明かしている。
松尾光治