【ブライトン戦現地レポート】 南海岸に訪れた別れ…名将のラストダンスが物語るブライトンの魅力とは
試合は立ち上がりからおなじみのスタイルでボールを保持するブライトンが主導権を握る展開。開始わずか3分で上着を脱ぎ捨て半袖一枚となったデ ゼルビからも、このラストマッチに懸ける思いが伝わってくる。この日キャプテンマークを巻いた司令塔のララーナを中心に組み立てる攻撃は、轟音のようなチャントに背中を押され、「赤い悪魔」の守るゴールに幾度となく迫った。 しかしそこは強豪マンチェスター・ユナイテッド。 気迫のこもった粘り強い守備でブライトンの時間帯をしのぎ続け、後半に一瞬の隙を突いて無慈悲にも2度ゴールネットを揺らした。 結果だけを見れば、その試合巧者ぶりを見せつけたアウェイチームが3ポイントを懐に収めた試合だった。 しかし試合後のアメックススタジアムに漂っていた穏やかな余韻は、この功労者たちがサポーターたちと築き上げてきたものが一つの敗北では揺るがないことを示唆していた。
「最初に、トニー・ブルーム(ブライトンのオーナー)にありがとうと言いたい。 あなたは素晴らしいオーナーだし、そのことを忘れないでほしい」 試合後に開催されたセレモニーでイタリア人が開口一番述べたのは、オーナーへの感謝だった。 日頃からストレートな物言いが印象的なことに加え、英語が不得手であることも考慮すると、この発言は本心からのものだろう。 「彼は私にプレミアリーグ、素晴らしい選手たち、そしてブライトンという街に出会う機会を与えてくれた。 私はブライトンに特別な繋がりを感じている。 この街が大好きだ」 デ ゼルビが一言話し終わる度、スタンドからは万雷の拍手が送られる。 特に熱心に応援するサポーターが多く構えるホーム側ゴール裏、ノーススタンドからは「We want you to stay」の大合唱が自然発生し、その目に涙を浮かべる観客も数えきれず。 その光景はこのイタリア人が異国の地でどれだけ愛される存在だったかを物語っていた。