こう見えて「85%」の電動なんです! ベントレー・ブロワー・ジュニアへ試乗 2000万円の大人のおもちゃ
60km/hでもミュルザンヌを疾走する気分
シャシーは独自のラダーフレーム。サスペンションは、フリクションダンパーとリーフスプリングで構成される。 パワートレインは、大排気量の直列4気筒スーパーチャージド・エンジンではない。駆動用モーターの最高出力は20ps。歩行者へ近接を伝える未来的な人工音が、控えめに放たれる。 駆動用バッテリーは10.8kWh。フロントグリルの前に置かれた、スーパーチャージャー・ハウジングを模したケースに、充電ポートが隠れている。 狭い路地を走るのは簡単。全幅は約1.5mしかない。ウインドウやルーフはなく、上半身が露出し、周囲の視界は抜群。道が混雑していても、スルスルと隙間を縫うように運転できる。小さなフロントガラスは殆ど役に立たないが、スピード感は圧倒的。 ロンドン中心部は、時速20マイル(約32km/h)で一律に制限されている。コンフォート・モードはパワーが絞られるものの、交通の流れに不足ない加速が得られる。回生ブレーキは積極的に働く。 途中で片側2車線の道路へ合流。スポーツ・モードへ切り替え、20psを開放する。身をかがめてステアリングホイールを握る。60km/hを少し越えた程度でも、ル・マンのミュルザンヌ・ストレートを疾走しているような気分になれる。 リーフスプリングのサスペンションは乗り心地が悪く、骨まで振動が響く。ウォーム&ローラー式のステアリングラックは、スローレシオで曖昧。だが現代的なディスクブレーキが組まれ、しっかり止まれる。
洗練された運転体験とは別の次元の面白さ
基本的に全開で走れ、小さなロータリー交差点が楽しい。洗練された運転体験とは、まったく別の次元の面白さで満ちている。30km/h程度でも満足できる。気分は前例がないほど特別。注目度の高さも。 ウェストミンスター宮殿やバッキンガム宮殿の前を通り過ぎると、観光客がブロワー・ジュニアへスマートフォンを一斉に向ける。交差点で停まれば質問攻め。みんな笑顔だ。発進時にクラクションを鳴らすと、一層喜んでくれた。 冷静に捉えれば、ブロワー・ジュニアに意義があるとはいいにくい。バッテリーEVとしての性能は低く、雨から身を守る装備はなく、カタチは忠実でも大きさは85%だ。しかし、ロンドンでクルマを運転して、こんなに良い気分になれることは滅多にない。 価格も、冷静には受け止めにくい。1台10万8000ポンド(約2160万円)!で、大人のおもちゃだとしても破格。少なくとも生産数は99台だから、希少性は高いといえるが。 10倍は高額なハイパーカーでロンドを運転しても、これほど周囲を喜ばせることは難しいだろう。多くの人が、ブロワー・ジュニアを気に入ってくれたことは明らかだった。筆者もその1人だ。
リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)のスペック
英国価格:10万8000ポンド(約2160万円) 全長:3690mm 全幅:1480mm 全高:1270mm 最高速度:72km/h 0-100km/h加速:-秒 航続距離:104km 電費:-km/kWh CO2排出量:- 車両重量:550kg パワートレイン:電気モーター 駆動用バッテリー:10.8kWh 急速充電能力:-kW 最高出力:20ps 最大トルク:13.5kg-m ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
ジェームス・ディスデイル(執筆) ジャック・ハリソン(撮影) 中嶋健治(翻訳)