「男心に寄り添った無駄がない企画」 Xで「男の運動おにぎり教室」が絶賛されたワケ 深刻な背景事情
「一緒に食べるとおいしいね」
そこで、昨年10月に「男性限定」と銘打ち、理学療法士の体育指導を受けられる「男の健康教室」を実施しました。さらに、管理栄養士の指導で「火も包丁も使わずに簡単に栄養があるものを作る」ということでサバ缶を使った料理を実施すると、好評でした。 「料理の技術は人それぞれでしたが、参加者の中には『人と一緒に食べるとおいしいね』と話している人もいました。栄養や運動だけでなく、孤食への支援も必要だと感じました」 そこで、男性が参加しやすい、食事と運動ができる集いの場として、今年1月から、定期的に開催しているそうです。
全員で「いただきます」
毎月第2金曜日、午前10時になると、10人ほどの男性が集まります。継続して通ってくれる常連さんもいるそう。 参加者は毎回自己紹介と「好きなXX(食べ物など)」を発表し、職員がセッティングしておいた炊飯ジャーのスイッチを押します。そして炊ける約50分間で、筋力トレーニングを実施。椅子に座って棒を使った体操や、スクワットをします。「それなりに『きつい』と感じる負荷と量を行っていますが、全員がんばってくれています」 ご飯が炊けたら、全員で椅子やテーブルを準備して、今度はおにぎり作りを開始。「ツナマヨおにぎり」に「魚肉ソーセージ玉子おにぎり」、「塩こんぶおにぎりと台湾風豆乳スープ」と、毎回趣向を凝らしつつも簡単でタンパク質の豊富なレシピを用意しています。 食材はハサミで切るだけなど、手軽に調理できるメニューにしています。全員で「いただきます」を言ってから食べているそうです。 「前回作ったおにぎりを家でも作ったよ」と報告してくれる人もいるそうです。
65歳以上の「フレイル」は8.7%
特に担当者が心配していたのは、「フレイル(虚弱)」という状態の男性でした。筋力が衰えて疲れやすくなったため、家に閉じこもりがちになり、その結果、身体機能や認知機能が低下してしまった「要介護」になる手前の状態です。 東京都健康長寿医療センター研究所が、全国高齢者パネル調査(2012年)を分析した結果、65歳以上で「フレイル」に該当した人の割合は8.7%にも上りました。「プレフレイル(フレイルの手前)」は40.8%に跳ね上がります。特に九州・沖縄では「フレイル」は10.7%と高くなる傾向がありました。 「男の運動 おにぎり教室」に対してSNSでは「炊飯器を使えない人もいるけど、料理教室には行きづらい。男心に寄り添った無駄がない企画だ」という共感もありました。 SNSで話題になったことを、担当者は「肯定的な意見が多いのに驚きました。また男性の孤立化予防やフレイル予防など、その目的をすぐに理解している意見が多く、うれしかったです」と話します。 「筋トレ後におにぎりを食べるのはボディービルの手法」とうなる声もありましたが、「糖質も一緒にとることで、筋肉へのアミノ酸の取り込みが増えることは期待しています。でも、おにぎりを作るのは簡単に料理できて、おいしいのが主な理由です」と担当者。 今回をきっかけに、こんな期待をしています。 「Xを利用しているのは『教室』の対象年齢よりも若い人が多いと思いますが、『包括支援センター』という介護予防や介護について相談できる窓口があることを知ってくれたらいいなと思います」