頭のいい人が陥る「対話の落とし穴」とは? ベストセラー『LISTEN』に学ぶ、相手を深く知るためにやめるべきこと
■ 「先回り思考」を封印したから分かったこと 例えば、先日話した学生は、「つながり」という言葉を繰り返し口にしていたが、私にはその言葉を語る際の「間」が印象的だった。何かためらいがあるように感じる間だったのだ。 本人は無自覚だったらしいが、私の指摘を受けて、高校時代から引きずっている窮屈な人間関係や親との確執のストーリーを語ってくれた。どうやら「つながりコンプレックス」とも言うべき状態だったのだ。 私にとってはあまりやる気のなさそうに見えていた学生の一人だったが、そのストーリーを聞くことで、その学生の言葉が表層的なものから一気に深みを感じるものになった。 つまらないと思えるような対話があるとしたら、それはその中身が表層的なレベルにとどまっているからだ。表層的な課題は、カテゴリー分けができ、そして簡単に解決策が導き出される。しかし、そんなインスタントな解決策で物事がうまくいくことはない。短時間の効率的な対話を目指せば目指すほど、真の意味での効率性から遠ざかるのだ。 もしその効率的な対話に限界を感じている人がいるとしたら、本書の指摘に従い、相手の話に耳を傾けることにチャレンジしてみよう。自分の先回り思考を封印することができれば、そこにはカテゴリー分けなどできない複雑怪奇な、その人ならではの世界が広がっているはずだ。 そこに踏み入れば、一朝一夕に解決策など出せないカオスに出合う。だから共に悩むしかない。しかし、その対話は予測がつかないからこそ、がぜん面白いのだ。
荒木 博行