頭のいい人が陥る「対話の落とし穴」とは? ベストセラー『LISTEN』に学ぶ、相手を深く知るためにやめるべきこと
人間は極めてユニークな存在だ。表面だけを見れば、人間が抱えている問題はきれいに分類できそうな気がする。しかし、深く掘り下げていけばいくほど複雑であり、一人一人が抱える課題は全く異なることに気付く。人間は合理的にパターン認識できる存在ではなく、どこか不可解な部分を持っている存在なのだ。 ■ 「優れた聞き手」は何を大切にしているか? だからこそ私は、どんなに浅はかに見える問題であっても、とにかく自分から聞くようにしている。これは決して簡単なことではない。時に苦痛を伴う行為であるが、それが最も近道なのだ。 そのような「他者の話に耳を傾けること」について書かれた本がある。ケイト・マーフィが書いた『LISTEN』という本だ。翻訳版が2021年と比較的最近出されたこともあり、記憶に新しい人も多いだろう。 本書の中にこのような一節がある。 「ニコルスによると、優れた聞き手は、余っている処理能力を頭の中での寄り道に使わず、相手の話を理論的にも直感的にも理解するために全力をあげていると言います。 また、しっかり聞くとは、話し手の言わんとしている内容は妥当か、その話を聞かせてくれる動機は何かを、自問し続けることだともニコルスは述べています。 簡単に思えますが、自己認識、意図、さらにはそれなりの練習なしに、たとえ短い会話でもこの聴き方をずっとできる人はそういません。」 ここで注目したいのは、「頭の中での寄り道」という表現だ。私たちは人の話を聞いている時、常に「寄り道」の誘惑と向き合う必要がある。脳内リソースが、相手に向かわずに、それ以外の方向へ寄り道してしまうのだ。 それは、「今晩の夕飯は何にしようか?」というような全く関係のない寄り道もあるが、「この後、自分はどんなアドバイスをするか?」という先回り思考も寄り道に含まれる。そして、この先回りは健全な対話をするための障壁になると本書は指摘する。