ハイテク大手に寛大なトランプが「グーグル敵視」をやめない可能性
トランプに擦り寄るグーグルCEO
一方、グーグルの広告ビジネスに焦点を当てた別の訴訟も進行中だ。政府は、グーグルが広告市場における独占的地位を利用して、広告手数料を釣り上げたと主張しており、その背景に2008年に同社が広告プラットフォームのDoubleClick(ダブルクリック)を買収したことを挙げている。グーグルは、この訴えに対し、メタやアマゾンのような競合他社が存在していることを挙げ、「市場には十分な競争がある」と主張している。また、同社の広告からの取り分は業界平均よりわずかに高い程度だと述べている。この件の審理は9月に終了し、最終弁論は11月25日に予定されている。 トランプの反トラスト政策への疑問が浮上する中、彼は、イーロン・マスクやアンドリーセン・ホロウィッツ創業者のマーク・アンドリーセンなどのシリコンバレーの大物の支持を受けて大統領に返り咲いた。 かつてトランプを批判していたハイテク大手のリーダーらも、彼に微妙に歩み寄る姿勢を見せている。マーク・ザッカーバーグは、7月の暗殺未遂事件を生き延びたトランプを「バッドアス(すごいヤツ)」だと評していた。ジェフ・ベゾスは、自身が所有するワシントン・ポスト紙に、カマラ・ハリスを支持しないように指示を出し、トランプからの報復を避けようとしたとみなされている。 ■トランプに擦り寄るグーグルCEO グーグルCEOのスンダー・ピチャイも、トランプとの関係の改善を試みたようだ。選挙直前に公開されたポッドキャスト番組『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』に出演したトランプは、ピチャイが彼に電話をかけて、「マクドナルドでの選挙キャンペーンの様子がグーグル上でこれまでで最も大きな反響を呼んでいる」と伝えたと主張し、ピチャイが「素晴らしい人物」だと評していた。 しかし、テックリーダーたちのこうした歩み寄りが、トランプの政策に影響を与えるとは限らない。彼のワーキングクラスの支持層が、ハイテク大手に対する厳しい姿勢を求めているからだ。「共和党内にはポピュリズム的な傾向が強まっている。戦略に大きな変化はないだろう」と、法律事務所シューメーカー・アドバイザーズの反トラスト弁護士であるマーク・ワゴナーは語った。 トランプがグーグルの分割に介入するかどうかも議論の余地がある。司法省は、グーグルの分割および、モバイルOSのAndroidやウェブブラウザのGoogle Chromeといった特定事業の売却を検討中の救済措置の1つに挙げている。反トラストの専門家はフォーブスに対し、分割は現実的なオプションではなく、グーグルに対してサードパーティとより多くのデータを共有することを求めるなどの穏健な措置が適切だと語っている。 トランプは、反トラスト政策のアドバイザーとして、次期副大統領のJ.D.ヴァンスの側近であるゲイル・スレーターを指名したと報じられている。以前に業界団体のインターネット協会の幹部を務めていたスレイターは、バイデン大統領が任命したビッグテックを敵視するFTC委員長のリナ・カーンの後任選びにも関わるとされている。 新たなトランプ政権が、たとえ企業の合併案件の審査などを緩和したとしても、グーグルにとってはすでに手遅れかもしれないと反トラスト弁護士のワゴナーは述べている。「グーグルが、この訴訟の脅威から自らを救う最大のチャンスは、2020年に司法省が訴訟を開始する前のトランプの1期目にあった」と彼は指摘した。「一度訴訟が提起されると、その解決に向けたアプローチは根本的に変わる」とワゴナーは続けた。
Richard Nieva