日本製鉄、USスチール買収禁止の逆転劇はトランプ氏次第?損得勘定なら“買収一択”も根強いアメリカ国民の反対感情
■アメリカを象徴する企業買収に反対する国民感情
パックンは「勝算はあまりない」と予想とし、「大統領が変わって、交換条件を付ければ可能性はあるが、バイデン氏もトランプ氏も、アメリカ国民の民意には添っている」とUSスチールが日本企業に買収されることに対する国民の反発心を説明する。 松本氏は「同盟国による投資が、アメリカの安全保障を害することは基本的にない」として、「鉄鋼メーカーの生産量は、トップ10のうち6社が中国企業だ。買収が認められなければ、鉄鋼産業の中国支配が強まる。『日米間の連携強化で対抗すれば、中長期的には安全保障に資する』との日本政府の主張は正しい」と話す。 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「ある程度まともな感覚の人は、日本製鉄側の正しさをわかっている」としながら、問題は「Make America Great Againの中で、『USスチール』という国名が付いている会社が、日本に買われるのは嫌だという感情論」にあると指摘する。「感情論に乗っかっているトランプ氏は、今その旗を降ろすわけがない。パックンの言うように、交換条件を付ける以外あり得ない」。 パックンは「日本製鉄じゃなくて、ロシアでも、フランスでも、イギリススチールでも、他国の名前が付いた会社が、我が国を代表する企業を買うのは毛嫌いする。理性的に考えた結果ではない」と、背景にある国民感情を補足した。 ひろゆき氏は、「感情が政治を動かす時代になっている」との見解を示して、先進国で右翼思想が強くなっていることが背景にあるのではと考察。「日本製鉄が買収して、存続会社の社名を“USスチール”にする」というアイディアを出した。
■逆転のカギを握るのはトランプ氏?夏野剛氏「1月20日以降、トランプ氏が豹変する」
近畿大学 情報学研究所 所長の夏野剛氏は、「(大統領任期が始まる)1月20日以降、トランプ氏が豹変する」と予想する。「もともと民意を気にしない人だから、好きなことをやり出す。やはりトランプ氏はビジネスマンで、『アメリカの従業員をレイオフしない』『生産量を維持する』などを約束できれば、『アメリカに損のないディールになった』と認める可能性がある」。 そして、「こっちに乗った方が得だ」と判断すれば、「バイデン氏が止めたのを『俺が』交渉して実現させた」と主張する可能性があると話す。同様の判断が考えられるケースとして、「トランプ氏は『EVはもういい』と言っていたが、あれだけ(テスラCEOの)イーロン・マスク氏に助けられたら、話も様変わりするのではないか」と推測する。 松本氏は第1次トランプ政権時代に通商交渉を担当していた経験から、「トランプ氏は理屈では動かず、『身内だ』と思ってもらえて、初めて話を聞いてもらえる」と振り返る。トランプ氏は「関税を上げれば、USスチールが買収される必要もない」との立場をとっているが、これにはむしろ「関税で鉄鋼産業が守られてきたから、競争力が落ちてしまった」と否定的だ。「ただ、トランプ氏は関税が一番好きだ。追加で関税を課すよりも、日本と一緒になる方が利益になると、納得させる必要がある」。 また、日本政府の動向もカギを握る。「日本製鉄への中止命令で、日本企業はアメリカへの投資をためらっている。日本政府として懸念をしっかり伝えることで、判断を覆す余地を生む。日本製鉄だけでなく、日本政府や与党が一体になってバックアップすべきだ」と求めた。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部