爆撃、飢えに続いて襲いかかる寒さ 戦火の下で試練の冬を迎えたガザの人々
パレスチナ自治区ガザの人々は戦火の下で2度目の新年を迎えた。イスラム原理主義組織ハマスの掃討作戦を続けるイスラエル軍は2日、ガザ各地を攻撃し、パレスチナ通信によると、民間人ら80人以上が死亡。イスラエル軍は食料など支援物資の流入も制限しているとされる。住民の暮らしは厳しくなるばかりで、赤ちゃんが寒さに耐えられず死亡する事例も増えてきた。新年を祝う雰囲気とはほど遠い。 ■支援物資が全く足りない エジプトの首都カイロに住む30代女性の交流サイト(SNS)のアカウントに突然、「助けて」というメッセージが届いたのは昨年12月上旬のこと。ガザ南部ハンユニスにいるという女性からで、「支援物資が全く足りない」と訴えた。イスラエル軍は昨年5月、ガザ南部ラファとエジプトとの境界地帯を掌握し、入域する物資が減った。女性は「わずかに届く食料も大半が腐っている。軍が検査に時間をかけている」と批判した。 イスラエル軍は昨年10月、難民キャンプがあるジャバリヤなどを封鎖し、攻撃を強化。食料搬入も遮断され住民多数が南部などに避難を余儀なくされた。昨年後半からは支援物資を積んだトラックが武装集団に襲撃される事件が相次ぐ。SNSで取材に応じた中部デールバラハにいるという男性(51)は、衣類や小麦粉、砂糖などが軒並み高騰しているとし、「大半の住民には手が出ない」と窮状を語った。 ■低体温症で赤ちゃん死亡 夜の気温は摂氏7度前後まで下がり、爆撃や飢えにおびえる人々に寒さが襲いかかる。英BBC放送(電子版)は昨年12月31日、2週間でテントなどで暮らす赤ちゃん6人が低体温症で死亡したと報じた。生後約20日でわが子を亡くした女性は「妊娠したと分かったとき生まれたらどうやって服を確保しようかと考えた」と振り返った。 ガザでは昨年11月、土砂降りの雨で数千人分のテントや寝具が押し流された。イスラエル軍の度重なる避難指示で居場所を転々とするうち家財道具や貴重品を手放してしまい、十分な防寒具がない人もいるようだ。 ガザ保健当局によると、戦闘が始まった2023年10月から昨年12月末までのパレスチナ人の死者数は4万5000人を超える。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長は昨年末、ガザでは1万4500人の子供が死亡したとし、「1時間につき子供1人が死亡している」計算だとX(旧ツイッター)に投稿した。(カイロ 佐藤貴生)