「死者の手」ロシアの核ミサイル自動発射システムは「今も機能している」 現地メディアの報道から読み解く「最高機密」の現状
ウクライナ軍によるロシア軍への反転攻勢が始まったが、ロシアの核使用を巡る緊張は依然として高まっている。モスクワ中心のクレムリンへの無人機攻撃を受けロシア政府高官から戦術核使用をほのめかす発言が相次ぐ一方、ロシアとその同盟国ベラルーシがロシア戦術核のベラルーシへの配備で合意。年内にも配備が完了するとされ、ウクライナを支援する北大西洋条約機構(NATO)に対して核で対抗するロシアの立場が明確になった。ロシア民間軍事会社ワグネルの武装反乱により国内情勢の不透明さも増している。 ロシアが核攻撃に踏み切ったらアメリカはどこに報復するか? 米政権内で行われていた机上演習の衝撃的な中身 22年5月
こうした中、米国との全面核戦争になった場合、ロシアを防衛する最後のとりでになるとされるのが「核ミサイル自動発射システム」。冷戦時代に始まり、ロシアで「ペリメトル」、欧米で「死者の手」「審判の日の兵器」と呼ばれる同システムの運用は現在どうなっているのだろうか。ロシアメディアの報道などから現状を探った。(共同通信=太田清) ▽効率的に機能 今年1月、ロシアと国境を接するバルト3国の視聴者を対象としたロシアのニュースサイト「バルトニュース」が、ロシアの「核ミサイル自動発射システム」について、ロシア退役軍人で、ロシア科学アカデミー米国カナダ研究所副所長のパーベル・ゾロタリョフ氏のインタビュー記事を掲載した。同氏は1979年から85年にかけ、旧ソ連で戦略核戦力を担っていた戦略ミサイル部隊に所属、同システム開発に携わってきた。 ゾロタリョフ氏はインタビューの中で、同システムについて「現在も運用されており、改良され続けている」と断言した。
バルトニュースは、ロシアの主張を内外に向け発信するためプーチン大統領の大統領令により設立された国営メディアグループ「ロシアの今日」傘下にあり、その報道はロシア政府の立場を色濃く反映、ラトビアなどで事実上その活動が禁止されている。ちなみに「ロシアの今日」はロシアによるウクライナ侵攻に伴い、欧州連合(EU)、英国、カナダなどの制裁対象だ。 同ニュースがこの時期に、あえて同システム開発者にインタビューし、その記事を掲載したことはそれなりの意図があったとみられるが、同システムが国家の最高機密で、その実態が謎に包まれていることから、その発言は注目された。 また、これに先立ち戦略ミサイル部隊最高幹部の一人である参謀本部長を務めたビクトル・イェシン氏も2019年6月、ロシア通信に対し、敵の先制攻撃でロシアの報復能力が損なわれる恐れがあることに懸念を示しつつ、同システムは「改良され、今も効率的に機能することができる」と保証した。 ▽地下から「指令ミサイル」打ち上げ