山陽電車「5000系」、クロスシートの希少感 「集団離反式」固定座席も 登場時「ごっつ輝いた」普通車だった
兵庫県南部を地盤とする山陽電気鉄道には、神戸市の西代駅と姫路市の山陽姫路を結ぶ本線(54.7km)と、飾磨から西へ延びる単線の網干線(8.5km)がある。 【写真をすべて見る】山陽電車「5000系」のうち、4両編成の5000編成。いまやレアな存在「集団離反式」のクロスシートの車内は?3両編成だった5000系登場時の貴重な走行シーンも。 本線の東端の西代駅から東へは神戸高速線を経て、阪神電気鉄道と阪急電鉄それぞれの神戸三宮に乗り入れる。さらに阪神本線との相互直通運転により、山陽姫路―大阪梅田間を「直通特急」が頻繁に走っている。そのため、神戸以西に縁がない人でも阪神間で山陽電車の車両を目にする機会は多い。
■山陽電車の中堅車両 その直通特急の主力を担っているのが5000系だ。座席の多くは進行方向に向かって座れるクロスシート。とくに明石海峡付近の区間では山陽電車の愛称である「シーサイドエクスプレス」らしい車窓を眺めることができる。 【写真】山陽電車「5000系」で4両編成の5000編成。いまやレアな存在「集団離反式」のクロスシートの車内は? 3両編成だった登場時の貴重な走行シーンも 山陽電車の車両形式には現在、3000系・3050系、5000系・5030系、6000系と3つのグループがある。3000系は1964年の登場で、初期は当時画期的だったアルミ車、次に鋼製車、再びアルミ車と製造時期によって車体の材質が異なる。
3000系のグループは製造両数が多く、機器類もバリエーションに富んでいる。とくにクリーム色の鋼製車の外観は、山陽電車と聞いて思い浮かべる人が多いのではないだろうか。一方、2016年にデビューした6000系は、今後も増備が予定されている同社の最新形式。大ベテランの3000系も若手の6000系への世代交代が進む。 こうした中、中堅の立ち位置にいるのが1986年登場の5000系。当時残っていた旧型の吊掛式駆動車を一度に置き換えるため、まず1次車として3両編成7本、計21両が投入された。
5000系は普通車用として登場しながらも、側面の窓に対して直角に座るクロスシートを採用した点が大きな特徴だ。ドアの間はクロスシート、車端部は側面の窓を背にしたロングシートのセミクロスシート車。座席の当初の配置は当時の0系・200系新幹線の3列席と同様の「集団離反式」で、真ん中のドア付近を境に反対側を向いた固定式のクロスシートを並べた。 主電動機(モーター)には3000系と共通の直流直巻電動機。一方、制御装置に界磁添加励磁制御を採用した。同社技術部の田中一吉さんは「旧来の吊掛式駆動車は加速が遅くダイヤ上のネックになっていた。5000系で取り入れた界磁添加励磁制御は直流モーターでも回生ブレーキが併用できる。省エネでメンテナンスの手間も減らせた」と話す。