イタリアのトマトと日本のトマトはどこが違う?
トマトソースは17世紀のナポリにスペインから伝わった
次に、イタリアの家庭料理の定番である「トマトソース(salsa di pomodoro)」の話に入ろう。じっくり炒めた玉ねぎとトマト缶を使った濃厚なソースは美味しいよね。パンだけしかなかったとしても付けて食べてしまうのが珍しくはない。 実はトマトソースに関する確かな記録で最も古いものは1692年のナポリに遡る。ナポリのスペイン副王の宮廷料理人アントニオ・ラティーニが出版した料理書「現代の執事」の中で、「スペイン風トマトソース」のレシピが登場しているんだ。当時、ナポリはスペインの支配下にあって、スペインはアメリカ大陸の植民地からトマトなどの様々な食材を輸入していた。これにより、トマトはイタリア料理に初めて本格的に取り入れられて様々なレシピに用いられるようになったんだ。 そして、現在もイタリア料理でよく使われているトマトピューレ(passata di pomodoro)はイタリアではなく、1796年にフランスで発明された。1837年はトマトソースのスパゲッティの初登場だ。ここで、やっと、今のレシピとほぼ変わらない形になったんだ。
時間がない時、何を作るか迷う時、トマトソースはそのまま使うか何かを加えるか、どっちにせよシンプルで最高に美味しい食事になる。どこで発明されたか何経由で来たかなんて、まったく考えないよね。でもこれだけは言える。イタリア人がいなければ「パスタ+トマトソース」の最強コンビは生まれなかったはずだ! 南アメリカのトマトはスペインに入って数百年かけてやっと食材として利用されるようになった。そして、スペインやフランスの発想によって、現在のイタリア料理に辿り着いた物語。この流れで、日本でさらに進化して生食として広がって新たな習慣にまでなった。 イタリアのトマトは深い味わいだけではなく、その歴史と文化も魅力の一つだ。ぜひ、皆さんもイタリアのトマトを使った料理に挑戦してみない? きっと、新しい食の世界が広がるはず。そして、肌もツルツルになるかもよ?
● マッシ
本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)