長野県松本市文書館の木曽さん 認証アーキビストに合格
長野県松本市文書館の専門員・木曽寿紀さん(32)が今月、国立公文書館が認定する「認証アーキビスト」に合格した。歴史的に重要な古文書や公文書などの記録を評価選別し、将来に向けた保存や活用に携わる専門職で、市関係者の認定は初めて。ただ多くの行政機関にアーキビストの採用枠はなく、市文書館も木曽さんを含むほとんどの職員を非常勤で回しており、認定を地域社会に還元していくには課題もある。 アーキビストは公文書館などのアーカイブズで働く極めて重要な専門職とされる。国立公文書館は、専門職がいない組織では「本来残されるべき記録が廃棄されるなど、後世に伝えるべき記録、記録をもとに記されるはずの歴史が失われる恐れがある」などとして令和2年度に認定制度を創設。知識や技能、実務経験、調査研究能力などを評価する内容で、24日公表の本年度の実施結果を含めると、これまでに全国の355人が合格した(県内関係は県立歴史館、長野市公文書館、安曇野市役所などの9人)。 木曽さんは令和元年秋から松本市文書館に勤務し「専門機関の職員として当初より制度を意識してきた」。9月に個人で申請し、合格通知を受け取った。私費で登録料を納め、来月1日付で正式な認証となる予定で「ゴールではなくスタート。気を引き締めて業務にまい進したい」と話す。 一方、国内ではアーキビストへの理解が低く、定着も図られていない。市文書館でも行政管理課課長補佐が務める館長を除くと、5人の職員全員が非常勤だ。正規職員が配置されたとしても、数年で異動対象となりうるジレンマを抱える。 木曽さんは来年の戦後80年を前に同館への資料照会が増えている点に触れ「専門職がいれば、より適切な対応や資料の活用に役立てるはず。アーキビストの有用性、重要性が社会に浸透していくように」と願っている。
市民タイムス