なぜ阪神はヤクルトの42歳左腕を攻略できなかったのか…6度目完封負けで球団最速20敗
二死満塁となって続くのは小野寺である。21日の横浜DeNA戦では代打逆転満塁本塁打を放っている。神宮を埋めた虎党は“満塁男”にその再現を託した。小野寺は食い下がった。カウント2-2から外のストレートをライト線に弾き返す。惜しくもファウル。だが、それも石川にとっては計算づくだったのか。続く7球目。外角の変化球を意識していた小野寺は裏をかかれた。131キロのクロスファイアーに微動だにできない。ヒザ元にストレートを決められ見逃しの三振である。 石川の円熟の技である。阪神打線は手玉に取られた。4回、5回と2つの併殺打。佐藤も6回に裏をかかれ137キロのストレートに見逃しの三振に終わっている。 ストレートは130キロ台。そこにシンカー、チェンジアップ、シュート、カーブ、カット、スライダーという多彩な変化球を交え、しかも、1球ごとにリリースや投球のタイミングを変える。極端な例が、走者がいなくても使うクイックだが、それを掛け合わせれば、おそらく何十通りものパターンを持つ。これが小山正明、米田哲也氏(22年連続)以来、45年ぶり史上3人目となる新人以来21年連続勝利の記録を作った石川の真骨頂である。 こういう投手の攻略を個々に任せていればドツボにはまる。チームとして攻略せねばならない典型的な投手だ。ヤクルトID野球の基礎を作った故・野村克也氏は、投手攻略のパターンをいくつかに分類していた。大まかに言えば、カウントや状況のデータを洗って投げてくる確率の高い球種で絞る、打球方向を決める、内外のコースで絞る、の3種類である。 何十通りものパターンを持つ石川に対して球種を狙えば確率が下がる。確率の高い攻略法は、内、外のコースに絞り、センターを中心に、右打者ならライト、左打者ならレフトと、逆方向への打球を意識させることだろう。 では、阪神は何をやったのか。 小野寺、近本には、その形跡は見えた。ストレートであろうが、変化球であろうが、外角球の甘いボールを逆方向へ。だが、強いスイングをさせてもらえなかった。おそらく石川には、もうひとつ上をいかれて彼らは、そこを打たされていた。 ただ打者全員が、攻略法を統一していたか?というと疑問だ。6度の完封負けすべてに共通していることではあるが、チームとして何を狙っているのかの意思統一に欠けているように見える。つまり凡打の内容が悪いのだ。ベンチの指示が中途半端なのか、個々の選手が指示通りに動けないのか、は不明だが、同じパターンを繰り返してやられていることが問題だろう。 加えてヤクルトの好守にもはばまれた。 3回には二死から佐藤のライトの右を襲う長打性の打球を太田が倒れ込むようにしてダイビングキャッチした。6回先頭の近本の打球はセンターへ抜けかけたが、長岡が横っ飛びでキャッチするファインプレー。ただアンラッキーではない。石川がサイン通りに配球するから野手が予期して守れるというポジティブな連鎖があったからこそ。石川の投球が呼び寄せた必然のファインプレーだった。7回二死一塁からは代走の島田が盗塁を狙ったが、内山に刺された。ヤクルトの守りは強固だった。 報道によると矢野監督は「オレ自身もどうやって点を取るかっていうのを考えていかないといけない」と語ったという。 今日24日のヤクルト先発は5年目の金久保。15日の横浜DeNA戦では6回を2失点にまとめて今季初勝利をつかんでいる。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)