汎用化進むスマホ用アクチュエーター…世界シェア構図揺らぐ、日本メーカーは活路をどう見出すか
OIS市場5割増、スマホ搭載カメラ数増で
スマートフォン内蔵カメラのピントを調節し、手ブレを防止するアクチュエーター。日本の電子部品メーカーが技術力を強みに世界シェア上位を占めてきたが、この構図が近年揺らいでいる。スマホカメラの性能向上が重視される一方、それに寄与するはずのアクチュエーターは汎用化が進展。海外からの新規参入が増え、収益性低下の懸念も強い。日本企業はどう活路を見いだし、今後の成長につなげるのか。(山田邦和) 【一覧表】アクチュエーターの駆動方式ごとのメリット・デメリット 追いつ追われつのカーチェイスも縦横無尽のカンフーアクションも、鮮明にブレなく撮影できます―。米アップルが2022年に公開したスマートフォン「iPhone(アイフォーン)14」の上位機種のCMは、カメラ性能の向上を前面に打ち出す内容だった。初代iPhoneの発売から17年、スマホ市場ではカメラ性能が製品の魅力を訴求する“競争軸”になっている。 スマホの普及と軌を一にして、「フェイスブック」「インスタグラム」「X(旧ツイッター)」など写真を共有できる会員制交流サイト(SNS)が発達。多くのユーザーが高性能なカメラを求めるようになった。中国系動画投稿アプリケーション「ティックトック」への投稿増を背景に、近年は静止画から動画撮影へと使い方も広がる。 スマホカメラの中核部品で、人間の目で言えば網膜に相当するイメージセンサーは大型化や高画素化が進み、「静止画の画質は数年内に一眼カメラの画質を超える」(ソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長)とされる。 ただ網膜だけで目は成り立たない。センサー以外のスマホカメラ部品の一つがアクチュエーターだ。目の中にある毛様体筋のようにセンサーとレンズの距離を調節してピントを合わせたり、耳の奥の規管のようにブレを補正したりする。 アクチュエーターにはピント調節に特化したオートフォーカス(AF)と、AFの機能を備えつつ手ブレ補正対応も可能なOISがある。YHリサーチ(東京都中央区)によると、このうちOISの市場規模は22年に約42億ドル(約6000億円)。スマホ1台の搭載カメラ数の増加などを背景に、18年から約5割増えた。アルプスアルパインやミネベアミツミ、TDKといった日本の電子部品メーカーがシェア上位を占める。 OISの手ブレ補正は、コイルに電流を流して磁力を与え、磁石を通じて可動部を駆動させるVCM方式が主流。アルプスアルパインは小型のメカトロニクス技術が、ミネベアミツミも磁石を吊り上げて部品を小型化する旧ミツミ電機の設計が評価されシェアを伸ばした。 アルプスアルパインにとってアクチュエーターは成長の原動力だ。アクチュエーターを含むコンポーネント事業の23年3月期の営業利益は383億円。本体が手がける主要3事業の中で唯一の黒字だった。ミネベアミツミもアクチュエーターを含む事業の営業利益は427億円と、全社の4割超を占める。