国境付近に身を潜め…命がけで「声」発するミャンマーの表現者たち 日本の映像作家らが「伝える場」を開設、その名はドキュ・アッタン
忘れられた戦争―。 2021年2月に軍がクーデターを起こしたミャンマー。権力を掌握した軍が今もなお圧政を敷き、言論や表現は厳しく制限されている。だが、世界の注目はロシアによるウクライナ侵攻に集まり、ミャンマー情勢への関心は低下しているようにも映る。冒頭の表現は、国連の特別報告者によるものだ。 それでも現地や隣国との国境地帯には、弾圧を逃れながら命がけで映像を撮り、発信しているミャンマー人たちがいる。その活動を支援しようと、ミャンマーで当局に一時拘束された経験がある日本人ジャーナリストとドキュメンタリー映像作家がウェブサイトを開設し、発表の場をつくった。現地からの「声」を広く届ける取り組みを取材した。(共同通信=岩橋拓郎) ▽消えた自由 ミャンマーを巡る現状はどうなっているのか。クーデターを起こした軍は非常事態を宣言し、国家顧問だったアウンサンスーチー氏率いる民主政府を倒して軍事政権を発足させた。市民に苛烈な弾圧を加え、ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」によると、今年8月22日時点で3966人が命を落とした。拘束された市民は2万4千人を超える。
軍は民主派や少数民族武装勢力との戦闘を続けており、弾圧や無差別空爆は広がっている。日本を含む国際社会は戦闘停止と民政への移管を要求しているが、暴政がやむ気配は一向にない。 ミャンマーのジャーナリストや映像作家らの中には、弾圧から逃れるためタイとの国境地帯への潜伏を余儀なくされている人も多い。ミャンマーでは1988年のクーデターでも軍事政権が樹立されたが、2011年に民政に移管した。再び軍政に戻るまでの10年間、表現の自由の幅は広がり、外国の芸能や文化も流入。この間、作家や芸術家らは軍政下ではできなかった表現活動に取り組もうという活気に満ちていたが、その希望も軍政の復活によりついえた。 ▽一緒に「声」を 苦境にあるミャンマーの表現者たちを支えようと、ジャーナリストの北角裕樹さん(47)とドキュメンタリー映像作家の久保田徹さん(27)が、クーデターから2年となった今年2月1日にウェブサイトを開設した。二人ともクーデター後のミャンマーで取材中、当局に身柄を一時拘束されたことがある。