国境付近に身を潜め…命がけで「声」発するミャンマーの表現者たち 日本の映像作家らが「伝える場」を開設、その名はドキュ・アッタン
サイトの名称は「Docu Athan(ドキュ・アッタン)」。ミャンマーのジャーナリストや映像作家、ミュージシャンらの作品に日本語と英語の字幕を付け、サイト上で公開している。無料で見られるが、視聴者はサイトを通じて寄付という形で映像作家らへの資金支援ができる。 久保田さんは取材に「ミャンマーの映像作家らは、国軍に居場所を察知されないよう国境付近で身を潜めながら活動している。同じ表現者として彼らの『伝える場』をつくりたかった」と開設の動機を語る。アッタンはビルマ語で「声」という意味。金銭的な支援にとどまらず、「一緒に声を上げる」というメッセージをサイト名に込めたのだという。 開設当初は、軍から拷問を受けた女性がその経験を語る「ザ・レッド」など3人の3作品を掲載し、8月までに9人の12作品に増えた。短編ドキュメンタリーやアニメーションなど表現方法はさまざまだが、共通するのは、軍政下の惨状を伝えたいとの思いだ。掲載作品は今後も増やしていく予定という。
▽すぐに消化できなくても 6月18日、東京・東中野のカフェ「ポレポレ坐」で、サイトに掲載した作品を上映する「ドキュ・アッタン シアター」が開かれた。来場した約100人が、軍による拷問や攻撃の映像のほか、民主派がつくった学校で勉強に励む子どもたちの様子などが映し出されたスクリーンに見入った。 北角さんと久保田さんに加え、若者の政治参加を促す団体「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さん(25)も登壇してトークし、能條さんは「見た後に『面白かったからシェアして』って簡単に言えるものではない。すぐに消化できるようなものでもない。でもせっかく発信している人たちがいるから広げたいと思うし、懸け橋のような役割を果たしてくれていると思う」と感想を述べた。 近畿大3年の古波津優育さん(23)は、このイベントのために奈良県から駆け付けた。ドキュメンタリーに関心があるといい、「ミャンマーのジャーナリストは命がけで活動している。背負っているものが違う」と刺激を受けた様子だった。
久保田さんは「彼らはかわいそうというより、力強い人々であって、それを映像で伝えたかった。どんなに現実が厳しくても目を背けたくない」と話す。ミャンマーの表現者たちが必死に発する「声」は、日本の若い世代にも確かに届いている。