不正、業績悪化を追及 経営陣防戦、陳謝相次ぐ 収益目線シビアに・株主総会〔深層探訪〕
27日に集中日を迎えた3月期決算企業の定時株主総会は、不正行為や業績悪化で経営陣の陳謝が相次いだ。法令順守は事業を行う上での大前提で、企業価値向上を求める株主の視線は厳しくなる一方。年に1度の対話の場は緊張感を増している。 【図解】出荷が停止された車種 ◇企業統治に懸念 「ご心配とご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げる」。トヨタ自動車、スズキなど自動車業界の5社で型式指定の申請を巡る不正行為が今月3日に発覚。スズキが27日に開いた総会の冒頭、鈴木俊宏社長は他の自動車大手の総会で相次いだおわびと同じ言葉を述べ、「法令順守強化に全社で努めていく」と決意を示した。 トヨタは2024年3月期に日本企業初の5兆円を超す連結営業利益を計上したが、18日の総会で豊田章男会長の取締役再任への賛成率は72%弱と、前年から12ポイント余り低下。企業統治の不全を問う声も聞かれ、豊田氏は「私自身が責任者としてトヨタグループの航海をリードする」と誓った。 三菱UFJフィナンシャル・グループの27日の総会では、亀沢宏規社長が金融庁から傘下の三菱UFJ銀行と証券2社が業務改善命令を受けた問題を陳謝し、役員報酬の減額検討を表明した。70代の男性株主は取材に「曖昧にせず、きちんと処分してほしい」と求めた。 ◇崩れる岩盤 過去最多だった株主提案では、経営陣刷新を求めたアクティビスト(物言う株主)の一部が成果を挙げた。「経営陣は営業赤字で株主価値を毀損(きそん)し続けてきた」として、ダイドーリミテッドに国内投資会社ストラテジックキャピタル(SC)が提案した独自の取締役候補の選任は、27日の総会で6人中3人が可決。丸木強SC代表取締役はオンライン説明会で「株主に選んでもらった」と話し、会社提案で可決された5人と力を合わせた経営の立て直しを求めた。 今後はさらに、企業が取引先との営業関係維持などを目的に保有し安定株主として機能してきた「政策保有株」の圧縮も進む。野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員は政策株について「(会社提案に賛同を見込める)岩盤と見なされなくなっており、企業は株主と緊張感のある信頼関係を構築する必要がある」と指摘する。 ◇株価の改善策要求 東証が昨年、「株価や資本コストを意識した経営」を上場企業に要請し、収益性向上を求める投資家の目線は高くなった。業績不振のシャープでは、27日の総会で沖津雅浩新社長が「株価を意識した経営に全力で取り組む」と強調した。 議案の採否に影響力を持つ機関投資家は、議決権行使の基準を厳しくしていく。ニッセイアセットマネジメントは来年6月から株価純資産倍率(PBR)が1倍未満の場合、東証の要請に沿って資本効率や株価の改善策を公表するよう求める。 大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは「企業は事業ポートフォリオ(構成)改革などに取り組み『稼ぐ力』を示す必要がある」と話している。