メディアに掲載されない被災地「生活していきたくても…厳しい故郷の“現実”」リアルに発信し続ける 輪島市町野町出身のシナリオライター・藤本透さん
■背中を押したのは、アニメの主人公 ふるさと輪島市町野町のことを日々発信する藤本さん。きっかけは、2011年に放送されたアニメ「花咲くいろは」でした。 作品では、金沢市の湯涌温泉、今回の地震で大きな被害を受けた七尾市中島町にある、のと鉄道・西岸駅などが舞台モデルになっています。藤本さんはアニメから7年後の世界を描いた小説版を執筆していました。作品の主人公・松前緒花(まつまえ・おはな)は、思い立ったら即行動する活発な少女として描かれています。藤本さんは、「緒花ちゃんが背中を押してくれた」と話します。 藤本透さんインタビュー 「どうにかして安否確認ができないかと画策していた時でした。1/1のことです。町野町の情報を募るたくさんの方の発信を目にしましたが、拡散力がある方はいらっしゃいませんでした。町野町の中でおそらく最も拡散力があるのは私であると気がついたとき、こんなとき、緒花ちゃんならどうするだろうと考えました。緒花ちゃんなら間違いなく行動する、そう思った瞬間、背中を押してもらえたと感じております。安否確認や情報発信にがむしゃらになれたのは、緒花ちゃんがあのとき背中を押してくれたおかげです。」 3月に東京で行われたアニメのイベントでは、復旧復興を願い、藤本さんが執筆を担当された小説とチャリティイラストのセットが販売されました。 ■「生活していきたくても…厳しすぎる現実」 先日、倒壊した藤本さんの家の2階に置いてあったミニキリコが、運び出されました。このミニキリコ、藤本さん父娘がお世話になった恩師の方が、制作したものです。子供たちの健やかな成長を願い、書かれているのは「元気な子」。 地震の被害を免れることができた数少ないものの1つです。 輪島市では、被災した建物を市が所有者に代わって解体・撤去等を行う「公費解体制度」が始まりました。かろうじて倒壊を免れた家でも家電製品が全て壊れてしまっていたり、ブルーシートで覆った屋根や壁の隙間から雪や雨が家の中に入り込み、家じゅうがカビだらけになってしまったり、家の前まで水は来ていても敷地内で配管があちこちで破損していたりというケースもあります。また、これまで商いをしてきた人たちは、先が見えないため、商売を続けるべきかどうか決めることが出来ない人が多くいます。仮に避難所から自宅へ戻って暮らすと決めたとしても、家の修理、整理、掃除に加え、食料をはじめとした生活必需品の調達にこれまで以上の時間がかかります。自立、生活再建をする人の目の前には厳しすぎる現実があります。