メディアに掲載されない被災地「生活していきたくても…厳しい故郷の“現実”」リアルに発信し続ける 輪島市町野町出身のシナリオライター・藤本透さん
■隣人から「家、潰れとる!」…発生当時の状況をまとめる 地震発生後、藤本さんは、X(旧Twitter)で、毎日、県・市のホームページの情報を抜粋し発信しているほか、SNSを通じてつながった地元の方々と連絡を取り合い、町野町の状況を細かく発信しはじめました。旧知の建設会社やスーパー、豆腐店… 地元の人にしかわからない情報は、県外に暮らす人たちにとって、とても有益な情報でした。そして、地震当時の家族の話聞き取り、記事としてまとめました。 家族からの聞き取りの一部より 「家中のものが落ちて飛び出して散乱した。 父が立ち上がろうとするのを押さえつけ、とにかく揺れが収まるのを待った。揺れが収まった後は、このまま家にいてはいけないと思い、両親と共に勝手口から外へ出ようとした。そのとき、外から「藤本さん家、潰れとる!」と近所の人の悲鳴が聞こえた。父が「そんなわけあるかい!」とスリッパのまま飛び出して行ったが、家の1階部分は完全に潰れて倒壊していた。」 この記事がインターネットに掲載されると、「当時の大変な状況を冷静にまとめてある」と大きな反響がありました。 藤本透さんインタビュー 「報道で見聞きする内容の偏りを感じていたことが大きな理由です。出来る限り詳細に、冷静に発災時の家族の状況を語ることで、感情に強く訴えることなく被災地の状況を知って頂けるのではないかと感じました。地震発生後の状況をまとめたのは、誰もが被災者になる可能性があるこの日本で、少しでも誰かの助けになるのではないかと考えたからです。」 ■「ちきない」「どんならん」能登の人々の気質を踏まえた方言集を作成 さらに、被災地へ応援に来られる方のために能登の方言をまとめました。「能登は優しや土までも」と言われる我慢強い能登の人々の気質を理解してもらうためです。 藤本透さんインタビュー 「能登は人口が少なく、石川県の外で能登の方言を耳にすることは滅多にありません。奥能登は特に高齢者が多いことから、支援に入られた方が大切なSOSを逃してしまわないように、また感謝の気持ちが正しく伝わるようにと願い、能登の方々とコミュニケーションを取りながらまとめました。」