名スカウトがセンバツで選ぶ逸材10人
センバツ甲子園のベスト8が出揃った。今日29日に8強戦が行われるが、今大会もプロが注目する今秋のドラフト候補が聖地の土を踏んだ。その筆頭は不発のまま2回戦で姿を消した早実の清宮幸太郎だろうが、元ヤクルトのスカウト責任者で古田敦也らを発掘した片岡宏雄さんに、ここまでを振り返って、気になるドラフトの逸材をピックアップしてもらった。 片岡さんは、「全体的に不作。どのスカウトも文句無しのドラフト1位に挙げるのは清宮一人だけだろう。私がスカウトならば“夏までに成長を見ておこう”と早々と甲子園を退散していたと思う。春のセンバツは調整具合から投高打低の傾向になるものだが、今大会は、投低打高。 投手は、素材として面白い選手は12人ほどいたが、皆ムラがありすぎた。1試合良ければ次が駄目。1回がよければ次が駄目といった感じだった。投手の中で間違いなくドラフトにかかるというのは、3試合に完投した福岡大大濠の三浦一人じゃないだろうか。つまり、厳しい見方をするようだが、今センバツで本当の逸材は、2人だけだった」と言う。 それでも、片岡さんは、いわゆるプロスカウトの中でつけられるB、C評価にまで広げて投手5人、捕手1人、野手4人の名前を挙げた。 投手の中でのトップ評価は、引き分け再試合も含めて3試合で35回、計475球を一人で投げきった三浦銀二(福岡大大濠)だ。 「安定感は一番。今大会出てきている中で、最もピッチャーらしいピッチャー。緩急をつけることができるし変化球でストライクがとれる。ストレートも1回戦では147キロを出した。スカウトからすれば、ここまでの球数を投げられると“故障しないか”と不安だろうが、その体力は評価できる。芯のできているピッチャーだろう。横浜DeNAを引退した三浦大輔のようなピッチャーになる可能性がある」 三浦に続くのは まだ1点も取られていない西垣雅矢(報徳学園)、最速147キロをマークした大型右腕の山口翔(熊本工)、優勝候補の履正社を苦しめた左腕、桜井周斗(日大三)の3人だ。 「西垣は、丁寧なピッチングをするし、プレートさばきがいい。山口は、伸びシロへの期待値を含めた素材としては、見逃せない投手だろう。桜井は、スライダーが武器のピッチャーだが、あれだけコントロールができて空振りの取れる変化球はプロでも面白い。楽天の松井裕樹もそうだった」 そして片岡さんが「私がスカウトならば下位指名しておく」と付け加えたのが、早実の清宮幸太郎を幻惑させた独特のサイドハンドの安田大将(東海大福岡)だ。ストレートは135キロ前後程度で、奪三振も18回を投げてたったの3つという完全な技巧派投手だが、「野球は決してスピードとパワーだけでない。彼みたいなピッチャーに、それを証明してもらいたい。テンポといい、ボールの浮かし方、落とし方も絶妙。いまやプロ野球でアンダスローのピッチャーは、西武の牧田や、ヤクルトの山中くらいで、いなくなりつつあるが、彼みたいなピッチャーがいてもいいだろう。山本昌もストレートは130キロ台だったんだから。どこか安田を指名するようなアイデアのある球団が出てきてもいい」と熱をこめた。