いなば食品、大炎上も「ほぼ沈黙」の戦略的な是非とは。「沈黙は金」黙って耐えるのはもう通用しない?
投資家による評価が絶対ではないが、少なくとも株価は、それなりに正統性のある客観的指標と言えるだろう。感情ベースで、モヤモヤとした「嫌悪感」を可視化するのは難しいが、株価の推移を通して、おおよその消費者感覚をつかむことはできる。 それがない非上場企業は、「企業価値の低下」に気づきにくい傾向にあると考えられ、これはリスクでしかない。一見すると同じ沈黙でも、「知っていてあえて」と「気づかなかったから」では、後々残るダメージは異なる。沈黙を貫いて、いつのまにか手遅れに……となってからでは遅い。
■テレビが取り上げられるのも時間の問題だ 昨今は、SNSや雑誌で話題になったニュースが、すぐさまテレビにも輸入されるのが一般的だ。しかし今回は、まだ報道が広がっておらず、視聴者の中には「テレビCMを大量出稿しているから扱いづらいのでは」といった邪推まで続出している。ただ、これだけ世論が高まっている現状、一斉に取り上げ始めるのも時間の問題だろう。 いざテレビで広まれば、さすがに沈黙ではコントロールできなくなる。そこからは、超高速で対応を余儀なくされる。準備もままならないまま、しぶしぶ記者会見を開くこととなり、記者も、スマホ越しの一般消費者も「発言の矛盾点」を、目を皿のようにしながら探す。もし会見を短時間で打ち切ったり、質疑応答で当てる記者を制限すれば、それもまた非難の対象となる――。
そこまでエスカレートしてしまうと、もはや体制の維持も難しい。ジャニーズやビッグモーターと同様に、第三者を登用して、同族経営から脱却せざるを得ない可能性もあるだろう。いずれのケースも、経営刷新とともに、社名を変更した。 このまま沈黙を続けると、いなば食品もまた、経営一族の名前を冠した社名を変えるときが来る……というのは筆者の考えすぎかもしれない。しかし、「沈黙は金」が成り立つのが、なかなか難しい時代になってきているのもまた事実だろう。
城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー