【スクープ】「富士山登山鉄道」、山梨県がLRTに代わる新案構想 ゴムタイヤで道路走る「電車のようなバス」とは
■「LRTありきではない」知事の意志 3団体の出席者たちからは、「知事がわれわれの意見を一方的に聞いて終わりと思っていたら、意見のキャッチボールができてうれしい」といった声が聞かれた。この日はART案については話題にのぼらなかった。おそらく、今回の3団体から出された意見を取り入れて、反対派からも受け入れられるような案を練り上げていくのだろう。 一見良いことずくめに思えるARTには未知数の部分も多い。何より、世界の都市で運行実績があるからといって、富士山という過酷な条件下で問題なく運行できるかどうかはわからない。たとえば、降雪により道路に雪が積もった場合、マーカーを読み取ることは可能なのかといった問題だ。そのため、LRTに続き、ARTでも技術的な課題を洗い出す検討会の設置は必須である。
さらに、この新たな交通モードを住民に提案すれば、あらぬ方向から厳しい意見が出る可能性もあるだろう。ただ、少なくとも「LRTありきではない、住民の意見も聞きながら決めたい」という長崎知事の言葉に今のところうそはないようだ。その一例が、県の知事政策局に設置された「富士山登山鉄道推進グループ」という組織が3月末で廃止され、4月から「富士山保全・観光エコシステム推進グループ」が発足したことだ。「鉄道」という名前が消えたことに知事の強い意志が感じられる。
大坂 直樹 :東洋経済 記者