「お笑いの努力は目に見えにくい」『27時間テレビ』100kmサバイバルマラソン出場・モシモシいけが手にしたビッグチャンス
コロナ禍で目覚めた「野生」。マラソンビーストいけ、爆誕!
大学での4年間、お笑いサークルに所属し、サークル漬けの毎日。 就職して3年間、荒波に飲まれながらも、やりがいを感じられる日々。 芸人になり3年目、もがきながらも一段一段と階段を登っている最中、突然、ライブができなくなりました。コロナ禍です。 人前でネタを披露し、生で笑ってもらうことが一番の喜びである僕にとって、ライブができない期間はえげつないショックを受けました。 この鬱屈とした思いを発散したい、そう思った2020年5月、 10年ぶりに、外に走りに行きました。 当時は速くなりたいとかそんな気持ちはなく、ただ、「外に出たい」「走ると飯うめえ」「汗かくの気持ちよ」そんな程度のモチベーションだったと思います。 あとから知ったのですが、“ステイホーム”を余儀なくされるような環境下にいると、人間は「野性」を求め、キャンプや釣りなどをしたくなるそうです。キャンプブームもそれが一因らしい。 ランニングもその部類に入るそうで、どうやら僕の「野性」が目を覚ましてしまったようです。 僕の「野性」はみるみる成長していきます。 せっかく走ってるんだから、何か目標を決めてがんばろうと、ふと申し込んだ東京マラソンに当選。 2022年3月、初めてのフルマラソンに出場します。 目標は、初フルマラソンで、サブ3(3時間を切ること。市民ランナー憧れの称号)。 ぶっちゃけこれは高い目標でしたが、なぜか根拠のない圧倒的な自信がありました。 結果、大撃沈。 マラソンには「30kmの壁」というものがあります。30km以降、急に足が止まる現象。どの市民ランナーもこの壁を越えて、自分の目標を目指します。 僕の場合は、「25kmの壁」でした。そこまでかなりいいペースで走れていたのに、25km以降、体がズンと重くなり、足はガチゴチ、とにかく腹が減りました。 沿道の焼肉屋さんから香る炭火の牛肉の匂いに、腹がグゥと鳴った瞬間、僕の足が完全に止まりました。 そこからは、ちょっと走っては長く歩いての繰り返し。ゴールまでの時間は永遠に感じました。 圧倒的走り込み不足。無茶なペース配分。無計画なエネルギー管理。ダメダメでした。 あ、もう二度とやらない。しばらく続く筋肉痛でまともに歩けない日々を1週間ほど過ごしたあと、ふと思いました。 「またやりてえ」 人間は本当にすごいです。完全に美化されます。あの地獄も、今思えばいい経験。楽しかった。次はもっとやれそう。不思議とそう思えてくるのです。 そこからは反省点を洗い出し、克服のために練習の日々。 苦汁を飲んだ東京マラソンから1年後の2023年2月、 京都マラソンでサブ3を達成します。 2時間59分36秒。 格別でした。苦しんで苦しんで、止まりそうな足を必死に心で支えて、ギリギリ目標を達成できた喜びは何にも変え難いものでした。 楽しくてしょうがない。 こうして、「走る」という野性に取り憑かれ、完全に飲み込まれた獣、マラソンビーストいけが爆誕します。