海外経験豊富な元日本代表→U-16日本代表監督に。2度U-17日本代表のコーチとして世界を経験した廣山望の"ポケット"という言葉の使い方とは
―ポケットの進入は、あくまでも結果論と言いますか、あとづけですね。 廣山 そうですね。これまではクロスボールからの得点が少なかったんです。クロッサーの精度という課題もあったと思いますが、それよりも、クロスを上げる場所に問題があったので、ポケットのエリアまでえぐれば、得点できる可能性が高くなるという考えのもとに、そこから逆算しました。アジアカップ予選では、21点のうちの12点がクロスからのものでした。ポケットをえぐってからのクロスが、得点につながったわけです。ポケットをとりに行くという考え方ではなく、相手のゴールに向かった結果として、ポケットへの進入が増えて、それで得点も増えたということではないでしょうか。 ポケットへの進入が目的になってはいけません(図2)。ポケットに進入するために練習すると、そこだけにフォーカスしてしまいます。例えば、起点を外につくろうと考えたら、中から外へと斜めに入っていくようなアクションが増えますが、そうすると、ゴールから離れる動きが多くなります。一方で、外で起点をつくった上で、クロスからポケットをとって得点するパターンも考えられます。常にゴールに向かうことを目的にすれば、自然とうまくいくと考えます。
―カタールとの最終戦での2点目は、まさにその形でした。 廣山 外で起点をつくった上で、大外からさらにぐるっと回った小林志紋(サンフレッチェ広島ユース)のクロスから、ゴールが生まれました。小林が深い位置に入った際に、ボランチの野口蓮斗(広島ユース)がポケットに走ったことによって、相手のセンターバックが食いついたので、空いたポケットに谷大地(サガン鳥栖U-18)が入って、ヘッドで決めました。 ポケットを攻略したわけではありませんが、ゴールに向かったことによって、結果的にネットを揺らせたわけです。そういう崩し方も大事ですし、ポケットに入った際にゴールに向かうようなファーストタッチで持っていく方法もあります。ゴールに向かうアクションが結果的にポケットへの進入になれば、ゴールに向かった状態から、ポケットで受けるシーン(図3)が増えます。 (次回へ続く) PROFILE 廣山望(ひろやま・のぞみ) 1977年5月6日生まれ、千葉県出身。本田裕一郎監督(当時)の指導を受けた習志野高校において、福田健二(名古屋グランパスなどでプレー)らとともに、全国高校総体優勝を経験し、卒業後、ジェフユナイテッド市原(当時)に加入した。2001年に海外に渡り、セロ・ポルテーニョ(パラグアイ)やブラガ(ポルトガル)などでプレー。セロ・ポルテーニョ時代に日本代表に選出され、2試合に出場した。04年に、モンペリエ(フランス)から東京ヴェルディに移籍。セレッソ大阪やザスパ草津(当時)などにも所属し、12年に引退した。スペイン・バルセロナでの指導者海外研修を経て、14年から、JFAアカデミー福島U-15の監督やU-17日本代表のコーチなどを歴任。現在は、25年のU-17ワールドカップを目指すU-16日本代表の監督を務める
サッカークリニック編集部