米中が1年ぶり首脳会談 トランプ政権見据え、対話の重要性確認
米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は16日、訪問中の南米ペルーの首都リマで会談した。対面での会談は1年ぶり。来年1月に発足するトランプ次期政権下で米中対立の深刻化が懸念される中、両氏は対話を継続して競争を管理し、衝突を回避することの重要性を強調。人工知能(AI)に核兵器を使用するかどうかの判断を任せないことも確認した。 会談は両氏が出席したアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて実施された。対面での会談は昨年11月に米西部サンフランシスコ近郊で行われて以来。バイデン氏は来年1月に退任するため、今回が最後の会談になるとみられる。 バイデン政権は中国を「唯一の競争相手」と位置づける一方、偶発的な衝突を避けるため対話も重視。軍当局間などでの意思疎通を進めてきた。中国側も極端な関係悪化は避けたいとの思惑は一致しており、トランプ政権発足を前に関係の安定化を図った格好だ。 ホワイトハウスや中国外務省によると、習氏は「中米関係の安定した発展は人類の前途に関わる」とその重要性を強調。バイデン政権の4年間については「中米関係は起伏があったが、我々のかじ取りの下で、実りある対話と協力が行われ、全体的な安定が達成された」と評価した。またトランプ次期政権との関係についても「安定し、健全で持続可能な中米関係という目標に変わりはない」と説明した。 一方、トランプ氏は「タリフ(関税)マン」を自称し、全ての中国製品に60%の高関税をかけると公約している。習氏は「相手をライバルや敵とみなし、悪性の競争に陥れば(両国関係は)波乱に直面し、後退するだろう」と述べ、対中封じ込め政策は失敗すると主張した。 バイデン氏は「我々は常に意見が一致していたわけではないが、率直に本音をぶつけ合ってきた。こうしたやり取りは誤解を防ぎ、競争が紛争に発展しないことを保障する」と対話の意義を強調した。 またロシアの侵攻を受けるウクライナ情勢を巡っては、バイデン氏が、中国と関係が深い北朝鮮がロシアに兵士を派遣していることに触れ、「欧州とインド太平洋の平和と安定に深刻な結果をもたらす」と非難。さらに中国がロシアの防衛産業を支援しているとして改めて懸念を示した。 台湾に関しては、バイデン氏は台湾海峡の平和と安定の重要性に触れ、地域を不安定化させる行動をやめるよう求めた。 これに対して習氏は、台湾問題を「(踏み越えてはならない)レッドライン」と改めて強調。台湾の頼清徳総統と民進党政権を名指しで「独立派」と呼んで厳しく非難し、米国による支援をけん制した。 南シナ海やウクライナ情勢、朝鮮半島情勢を巡っても、習氏は自国の立場を正当化する主張を展開し、議論は平行線をたどったとみられる。 AIも議題になった。急速に軍事利用が進んでいることから、両氏は「リスクを慎重に検証し、責任ある方法で軍事分野でのAI開発に取り組む必要性」を確認した。【ワシントン松井聡、北京・河津啓介】