<2年越しの春へ・県岐阜商>/中 練習の指標を数値化 「自信持って打席に」 速球対策や長打力も強化 /岐阜
「145」「147」――。放課後の県岐阜商グラウンドに、控えの長尾依吹選手(2年)が数字を読み上げる声が響く。バットの先端がどれだけの速さで動いたかを示すスイングスピード(時速)だ。「選手自身で数値を確認し、プレーをどう変えれば良いのか、主体的に考えるきっかけにしたい」。鍛治舎巧監督(69)は練習のあらゆる指標を数値化する。 「140キロの速さの球を打つには、140キロの速さでバットを振らなければならない」(鍛治舎監督)。選手は毎日、計測機器の前に立って素振りをしている。 センバツまでの目標としていたスイングスピード145キロを、レギュラー9人中8人が超えた。高校野球のレギュラーメンバーのスイングスピードは135キロ程度。高木翔斗主将(2年)や伊藤颯希(そうき)選手(1年)ら5人は150キロを超す。鍛治舎監督は「全国のどこにも負けていない」と胸を張る。伊藤選手は「自信を持って打席に入れる」と実感している。 速球に目を慣らす練習にも力を注ぐ。5カ所の打席に1人ずつ分かれて行う打撃練習では、投球マシンを試合より3・44メートル手前となる15メートル離れた位置に置き、140キロの直球を打つ。初戦の対戦相手が市和歌山(和歌山)に決まってからは、相手エースで152キロの速球が武器の小園健太投手対策として、マシンを試合と同じ位置に置き、球速を155キロに上げた。 目を慣らすだけでなく、スピード感を正確に体感するためだ。高木主将は「最初は振り遅れていたが、(バットを後ろに引いて勢いをつける)テークバックを小さくし、無駄な動きを減らしたことで、打てる確率が上がってきた」と話す。 課題は長打力だ。秋季県、東海地区大会8試合を通じてチームが放った本塁打は1本にとどまる。打開策として11月以降、一日300本の素振りを始めた。内角低めや外角高めなど、イメージするコースを10スイングごとに変えて、バットを振る。 下半身や体幹の強化で、打球の飛距離を伸ばすトレーニングも実施。自転車をこぐ動作で1分間のタイヤの回転数を測る「パワーマックス」では220回転、あおむけの状態から両手でロープを引っ張り、ボートをこぐような動作で全身の筋力を測る「エルゴメーター」では、30秒間でボートが180メートル進む筋力を目標にしている。こうした練習を重ねた宇佐美佑典選手(2年)は「球種を見極められるようになった」。湊将悟選手(同)は「速くて打てないと感じていた155キロの速球にも慣れてきた」と話す。【熊谷佐和子】