仕事を理由に逃げる夫。妊活中なのに夫に拒まれ、追い詰められていく妻。すれ違うセックスレス夫婦の未来は…?【書評】
真剣に聞き出した結果、山木さんはポレ美は「大切な家族」だからセックスをする対象には見えないというのだ。なんと勝手な言い分なのだろうと思う一方で、一緒にいる時間が長くなればそういう気持ちになるのかもしれないとも思わされる。しかし、ここまで妻が望んでいるのなら、誠実に向き合うのもまた夫の役目なのではないだろうか。山木さんは不規則な時間でもポレ美に起こしてもらい、お風呂に入るときはタオル・パンツ・パジャマの3点セットを用意してもらうのに。ポレ美だけが努力して生活をサポートしているように見え、山木さんへの不信感が募っていく。
レスのまま時間がすぎていく中、ポレ美は周囲からの妊娠圧や子どもとのふれあいを通し、妊娠を強く意識し始める。しかし、セックスレスの状態で妊娠できるはずもない。9年間交際していたこともあり、ポレ美はこのとき30歳に。女性の妊娠のタイムリミットを思えば、ポレ美の焦りや悩みがひしひしと伝わってくるだろう。ポレ美が子どもを望み思い悩む一方で、実は山木さん自身も子どもがほしいと思っていた。夫婦で妊活に挑むも、山木さんの仕事や疲労、勃起不全などにより、レスすら解消できない。ふたりとも子どもを望んでいるはずなのに…。そんなままならない日々に、ポレ美は追い詰められていく。 タイトルやストーリーから、ポレ美が一方的にセックスを押し付けているように感じる人もいるかもしれない。しかし、お互い子どもを望んでいるのにセックスレスという現実は避けて通れない問題だろう。幸せな「家族」であるために大切なことについても考えさせられる作品だ。 文=ネゴト/ 押入れの人