横行する闇バイト、必要なのは“攻める防犯” 遠隔で家族を守る最新防犯アイテムとは?
各地で相次ぐ、“闇バイト”による強盗被害。これまでの犯人像とは違い、実行役はSNSによってつながった素人によるものが多い。新たな時代の犯罪に対して、私たちはどんな対策ができるのだろうか? 【写真】闇バイト対策ができる最新のスマート家電 ボイスチェンジャー機能で“攻める防犯”を 今回は元警察官であり、現在はパナソニックの防犯アドバイザーを務め、刑事コメンテーターとしても活躍する佐々木成三氏に、闇バイトによる犯罪の傾向と対策、そして最新の防犯グッズについて話を伺った。 ・SNS時代に生まれた闇バイトの“独自の特徴” 侵入強盗の認知件数は年々減少していたが、2023年には1.4倍になり、その後も増加傾向にある。最近話題になっている“闇バイト”による強盗被害だが、その実態について佐々木氏はこう語った。「闇バイトは素人による犯行で、手口が手荒なのが特徴です。メンバーはネットを通じて集められ、指示役は現場にいないこともあり、犯行に主体性がないんです。そして現場にいる実行犯たちは、ターゲットとなる住宅の下見をしていない傾向にあるのも特徴です」 闇バイト強盗は素人ゆえ、いままでの犯人像とは大きく異なってくるようだ。その独自性から、ターゲット選定が警察の読みから外れることもあるという。「刑事の目から見て、『ここは狙わないな』というような住宅でも被害に遭うケースがあります。たとえば、ガラスの強度を高める防犯フィルムを貼っていても、そのうえから捻曲げるように開けたり、近くに防犯カメラが設置されているコンビニがあるにもかかわらず、その場所を選ぶんです」 具体的には、どういった住宅が狙われやすいのだろうか。佐々木氏は共通点を「高齢者のひとり暮らし、もしくは2人暮らしの住宅」だと話す。そのうえで「街灯が少ない地方の住宅もターゲットになる可能性が高い」とした。その理由は「地方は治安がいいので家と家のあいだに距離があり、防犯カメラやセンサーがついていない家も多い」からだという。 「私の父も85歳でひとり暮らしをしているのですが、頑固だけど人が良い。だから騙されやすいんですよね。誰かが来たらドアを開けてしまう。このように親が『大丈夫』と思っていても、私たち世代が防犯対策をしてあげることが大切なのではないかと思います。そして、いま一度『自分は大丈夫』という考えを改めることも重要ですね」 ・新スマート家電で“攻める”防犯を では、実際に自宅に強盗が来たらどのように対策をしたらいいのだろうか? 今回は佐々木氏が指示役となり、闇バイト強盗の手口とパナソニック製品を使った防犯対策のデモ実演を行った。 防犯対策には、大きく分けて3つの段階がある。まずひとつ目は「外部との接点」だ。「最初の入り口は固定電話です。指示役は、固定電話をもとに作成した“闇リスト”を持っています。これはオレオレ詐欺といった特殊詐欺のほとんどが使っているリストと同じです。まず、犯人は業者や貴金属店などを装って、リストに載っている固定電話に連絡します。そこからターゲットがどのくらい財産を持っているのか聞き出すんです。いわゆる“アポ電話”ですね」 実際に、指示役から女性に電話がかかる。だが、知らない番号だと気づいた女性はデジタルコードレス電話機『VE-GD78DL』の「あんしん応答モード」で対応。そして何やら怪しい相手だと判断し、さらに「迷惑防止」機能に設定を切り替える。「迷惑防止」機能にすると、相手の着信は自動で録音されるのだ。この機能について佐々木氏は「最初の段階で、相手に情報の上書きをさせないことは重要です。録音は威嚇になるので、こういった“攻めの防犯”は犯罪者が嫌がります」と、解説した。 ファーストコンタクトである「外部との接点」で、これ以上こちら側の情報を漏らさないことがポイントだ。本商品には「迷惑電話相談」という機能も搭載。通話中に親機の「相談」というボタンを押すと、録音した音声を第3者に共有することもできるのだ。 玄関ではパナソニックのドアホン「VL-SWZ700」シリーズがしっかりと犯人たちの姿を捉えていた。本商品は録画ができるだけではなく、遠隔で操作することが可能。スマートフォンが4台まで登録できるため、第三者が通知を受け取って対応をすることができる。電話やドアホンも、機能を上手く活用することによって複数人で情報を共有することができるのだ。自分の判断だけで対応するのではなく、第三者に共有することで防げる犯罪もあるかもしれない。 本商品はボイスチェンジャーを使うことも可能だ。女性のひとり暮らしだと思い込んでいる相手にとって、男性の声が聞こえてくるのは予想外だろう。これが、“威嚇の防犯”である。 続いて2つ目のポイントは、「侵入を防止・威嚇する」ことだ。パナソニックから12月19日に発売される『モニター付き屋外カメラ VL-CV100K』(市場想定価格55,000円前後)は、人物を察知して録画するだけではなく、こちらから音声で声をかけることができる。ここで、女性は家まで押しかけてきた闇バイトに声をかけることに。 「犯罪のプロである玄人が1番嫌がるのは、音を立てることと、侵入に時間がかかることです。防犯ジャリを敷いて音が立ったり、侵入に5分以上かかると犯罪者の7割が諦めると言われています。でも、犯人が素人の場合は関係ありません。だからわかりやすく威嚇する“攻める防犯”が重要なんです」 3つ目のポイントは、「留守の偽装・警戒」だ。偽装については、不在時でも在宅しているように見せることができるアイテムも存在する。パナソニックの「LEDシーリングライト ライフコンディショニングシリーズ」には、「るすばんタイマー」という機能がある。不在時でも家の明かりをつけることで、相手を警戒する防犯ができるのだ。毎日の生活で活用するのもいいが、旅行や出張など、長期で自宅を空けるときの対策にぴったりだろう。 デモ実演では、ついに犯人が窓から侵入。ここで活用されるのが、『開閉センサー KX-HJS100』だ。窓を開けられると警報音が鳴り、開閉状態の異常を伝えてくれる。「音が鳴る開閉センサーはどのメーカーでも発売していますが、本商品の優れているところは、パナソニックの電話機やテレビドアホンと連動できるところです。たとえば2階にいるときに侵入された場合、『1階の勝手口の窓が開いた』と電話機やドアホンが知らせてくれるんです」さらに別売のホームユニットを接続し、専用アプリ「ホームネットワーク」をインストールしたスマートフォンやタブレットを最大8台まで登録可能なので、ドアの開閉状態をスマートフォンやタブレットから確認することもできる。 「警報音で異常を察知したら、パニックルーム(内鍵がついた部屋)に逃げて110番をしてください。強盗対策は、どれだけ早く異常を察知できるかと、どれだけ早く110番ができるかが鍵になってきます。構造上、パニックルームなどがない住居もあるかと思いますが、警察が到着するまでの時間稼ぎができればいいので、南京錠や金具といった後付けの鍵をつけた部屋でも大丈夫です」 ここまでさまざまな防犯アイテムを紹介してきたが、費用も含めすべてを一度に用意するのは難しい。そこで、まず最初に取り入れるべき防犯アイテムについて、佐々木氏はこう語った。「すでに使用している電話機があるのであれば、まずは電話機を防犯機能がある最新のものに買い換えて欲しいですね」 現代は、携帯があるため電話機を置いてない家も多いだろう。だが電話機は、いまだ高齢者にとって必要なコミュニケーションツールでもある。佐々木氏は「特殊詐欺が狙うほとんどが固定電話機からの情報なので、まずはそこの対策が必要ですね」と、改めて警告した。 手軽に持ち運べる防犯アイテムとして『防犯ブザー』も注目されているが、実際はどうなのだろうか。「たとえば、現在使用しているスマートフォンでもしっかりと対策はできます。電源ボタンを5回連打すると自動で緊急通報ができたり、Siriで110番に連絡したりすることもできるんです」 日ごろ使っているスマートフォンの防犯機能は、いざというときに活躍する可能性が高い。「犯行時、ひとりで対応しなければいけない可能性も高いるので、普段使っているスマートフォンにそういった機能があることを一度再確認しておくことも大事なことです」 犯罪率は、クリスマスや年末で世のなかの経済が大きく動く10月から12月に高くなるという。自身や家族の防犯がしっかりとできているのか、いまこそ見直す機会なのではないだろうか。
はるまきもえ