今年押さえておきたい再注目アイテムはコート!【2024年秋冬トレンド解説|渡辺三津子編】
Q3. 特に印象に残ったブランドとその理由。
Answer:コム デ ギャルソン川久保さんの「怒り」が黒の内なるエネルギーとして服に込められ、情動に訴えかけるショーでした。ネガティブな感情をファッションで表現するという稀有な挑戦(コム デ ギャルソンならでは)ですが、心が揺さぶられる強い美しさに満ちていました。
アンダーカバ----「普通の女性たちの日常」を祝福する高橋盾さんのデザイナーとしての円熟を感じさせるコレクション。ヴィム・ヴェンダース監督が創作した「ある女性の一日」についての文章が監督自らのナレーションで語られる美しい演出に感動。 ドリス ヴァン ノッテン----最後のウィメンズコレクションを見られたことと、40年近くファッションで女性たちに自信を与え、寄り添ってきたことに感謝したい。変わらないスタイルとインディペンデントなブランドの在り方を貫いた姿勢に拍手。美しい色、幸福感に包まれる素材とシルエット、華やかな花々と刺繍。自由に装うことを楽しみながら自立する女性のワードローブを支えた大きな功績。
Q4. コレクション取材を終えて感じることは?
Answer:ラグジュアリーブランドが才能あるデザイナーを迎えてブランド再生を試み始めてはや四半世紀。10年以上続くデザイナーは希少な存在ですが、ルイ・ヴィトンのニコラ・ジェスキエールは10周年を祝い、さらに5年契約を結んだということ。 一方で、デザイナー交代が頻繁になった昨今、ファッションにとってブランドのアイデンティティとは何なのかが、新たに問われる局面を感じたシーズンでした。
渡辺三津子 Mitsuko Watanabe ファッションジャーナリスト&コンサルタント @mitsuko_wtnb *「フィガロジャポン」2024年7月号より抜粋