企業献金で溝鮮明 野田氏が禁止主張、石破首相反論 衆院選敗北「党高官低」に〔深層探訪〕
石破政権が少数与党として初めて臨む各党代表質問が2日、衆院本会議で始まった。政治改革で焦点となる企業・団体献金を巡り、立憲民主党の野田佳彦代表は重ねて禁止を要求。石破茂首相(自民党総裁)は「不適切だとは考えない」と反論し、両者の溝が鮮明となった。 【写真】衆院本会議で、石破茂首相の答弁を聞く立憲民主党の野田佳彦代表 ◇野党どよめく 「なぜ『本丸』の企業・団体献金の禁止を議論の俎上(そじょう)に載せないのか」。最初に登壇した野田氏は政治資金規正法の年内再改正を迫り、首相の姿勢に切り込んだ。 野田氏は、先の首相の所信表明演説で政治改革への言及が終盤になったと指摘。「少数与党に陥った反省の下、国民の政治に対する信頼をどのように取り戻すか、そこから始めるのが本来の組み立てではなかったのか」と批判した。 野田氏は政策活動費廃止に加え、先の衆院選で当選した「裏金議員」にも改めて政治倫理審査会への出席を促すべきだと畳み掛けた。 これに対し首相は「政党として避けなければならないのは献金によって政策がゆがめられることだ。個人献金も企業・団体献金も違いはない」と答弁。野党席から「えーっ」と、どよめきが起きた。 首相は政活費廃止の方針は示しつつ、支出の一部を非公開とする考えを示唆し、政倫審出席は「国会で議論する事柄」と語った。 ◇「口出しできず」 首相は周囲に、所信表明で「『政治改革』を最初に持ってきたかった」とこぼし、企業・団体献金への問題意識もにじませてきた。ただ、衆院選大敗で政権基盤はもろい。自民内への配慮が欠かせず、指導力が発揮できない悪循環に陥っている。 自民から代表質問に立ったのは、裏金事件を起こした旧安倍派の福田達夫幹事長代行。福田氏は政治の在り方といった抽象論を展開し、裏金問題に踏み込まなかった。 首相は1日、首相公邸で木原誠二選対委員長、政治改革本部の小泉進次郎事務局長と面会し、企業・団体献金の存続や支出先の一部非公開を求める党内議論の推移について説明を受けた。首相は「(党に)口出しできない」と周囲に打ち明け、「党高官低」の力関係を認めざるを得なかった。 野田氏は記者団に対し、福田氏を登壇させた自民は「みそぎが終わったと思っている」と非難。自民は規正法再改正に向け、週内に与野党協議を再び開く考えだが、野田氏は「早く自民案を出すことが議論のスタートだ」とけん制した。 ◇国民民主と「蜜月」 国民民主党への姿勢は対照的だった。同党の浅野哲氏が「年収103万円の壁」見直しなど看板政策の実現を求めると、首相は「各党の税制調査会長でさらに議論を深めてほしい」と検討を約束した。 9日から審議入りする予定の2024年度補正予算案を巡り、野田氏は代表質問で「規模ありき。修正を求めたい」と態度を硬化させた。これまで政権との「是々非々」路線を取ってきた日本維新の会は、吉村洋文代表が自民との「対峙(たいじ)」を宣言。国会議員団トップの共同代表には「非自民、野党共闘」が持論の前原誠司元外相が就き、政権との対決姿勢を強める可能性がある。 このため補正審議を見据えた自民・国民民主の蜜月ぶりは一層際立っている。浅野氏は質問の最終盤に政活費廃止や、所属議員が規正法などに違反した場合の政党交付金減額措置の導入を要請。首相は「問題意識は共有している。誠心誠意尽力していく」と前向きに答えた。