トム・クルーズが乗った世界一有名なポルシェ「928」がオークションに登場! 映画『卒業白書』の劇中車は意外なほどリーズナブルだった!?
ポルシェ史上最大となる4.5Lエンジンを搭載
フロントに搭載された「Typ M28」水冷V型8気筒SOHCエンジンの排気量は、この時点までのポルシェ史上最大となる4.5Lで、ボッシュのKジェトロニック燃料噴射システムが採用された。 トランスミッションとアクスルユニット、ディファレンシャルをリアに一体化させた新しい928は、ほぼ50対50の重量配分を達成するいっぽう、後輪のジオメトリーを機械的に可変させ、さらなる車両安定性をもたらす「ヴァイザッハ・アクスル」も相まって、高性能スポーツクーペのハンドリングと、高級セダンの乗り心地の融合を実現した。 そして、テクノロジー面でほかのクルマと一線を画した傑作には、ルックスもまた時代を超越した新規感に溢れていたようだ。ランボルギーニ「ミウラ」の影響も指摘されたポップアップ式ヘッドライト、柔らかくフレアしたホイールアーチ、曲線的なプロフィールから構成される未来的なスタイリングは、かのスティーブ・ジョブズなど20世紀の影響力を及ぼした多くの人物たちの目に留まることになる。 そして、これらの先進的な技術とデザインは当時の識者からも高い評価を受け、1978 年には自動車業界で最高峰に位置づけられる 「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」 に選出されたのだ。
トム・クルーズの運転でカーチェイスシーンにも出演
1980年代のアメリカは、ティーンエイジャーの青春映画にとって、とくに豊穣な時代を迎えていた。そして、ジョン・ヒューズのような若手監督たちの成功のおかげで、シカゴの郊外はこれらの映画に絶好のロケーションとなっていた。 しかし、ヒューズ監督が『フェリスはある朝突然に』(1986年公開)にてフェラーリ「250GTスパイダー カリフォルニア」(ただしレプリカ……)をシカゴの街で爆走させる以前に、同じシカゴ出身のポール・ブリックマン監督は、1983年公開の名作『卒業白書』(原題:Risky Business)で、トム・クルーズという名のニューヨーク州北部出身の若くて無名の俳優を抜擢していた。 ヒューズのお気楽なコメディよりも、ムーディでエッジの効いたブリックマンの『卒業白書』では、トム・クルーズ演じる高校生ジョエルが、レベッカ・デモーネイ演じる娼婦ラナと恋に落ちる。そしていくつかの騒動のあげくに、父親の愛車であるポルシェ 928をミシガン湖に転落させてしまう。そこで、その修理費を賄うためにラナと共謀して、両親とともに不在の自宅を売春パーティの場としてひと儲けを企んだ……。 この作品では、プロットでもスクリーンでもポスターでも、ゴールドのポルシェ 928が大活躍している。この夏ボナムズ社の「The Quail」オークションに出品された928こそ、作中で若き日のトム・クルーズが走らせたクルマの1台なのだ。