おむつとシーツが真っ赤に染まって血の海に…自宅での最期を希望していた最愛の夫が、まさかの「病院死」…妻が気づけなかった「意外な落とし穴」
「救急車を呼んで!」
ところが茂雄さんの命綱となる人工呼吸器に細心の注意を払いながらの入浴中、3回目の呼吸停止が起きたのだが、そこで妻は、「お願い! 救急車を呼んで」とパニック状態になったという。 現場は混乱した――。 「ケアマネに連絡すると『救急車は呼ぶ必要ないですよ』という。訪問医に連絡しても『じゃあ引き揚げていいですよ。看取りに入りますので』という。私が『奧さんが救急車を希望している』と現場の状況を伝えても、『だってこれは奧さんとはちゃんと話し合って決めたことだから』と意に介さない。 その一方で茂雄さんはまさに死の淵を彷徨っていて、奥さんは全く諦めていない。私が帰ったら茂雄さんの死は確定する状況でした」 武藤さんは待ったなしの状況で、看護師として板挟みにあいながら『命を天秤にかける選択』の即決を迫られる事態になった――。 後編記事「ベテラン看護師が語る…意識のない夫を「諦めきれなかった」妻がすがった延命治療と、最愛の人を「後悔なしで見送る」ために「必要なモノ」」に続きます。
武藤 直子