野菜にもストーリーがある ペペロンチーノの食材は都会の片隅で生産される「箱崎小町」刺し身にもステーキにもなる「博多カブ」
「食の街」として全国的にも有名な福岡市。一方、九州最大の都市でありながら、野菜も生産されていることはあまり知られていません。野菜の「特長」や生産者の「思い」を付加価値として、「野菜もおいしい街」として打ち出せないか。都会の新たな取組がスタートしました。 【写真で見る】選ばれた4つのブランド野菜「博多しゅんぎく」「箱崎小町」「元岡トマト」「博多かぶ」
都心から車で30分 「博多かぶ」畑
福岡市の都心部から車を走らせること30分。川の流域に広がる黄緑色の畑が見えてきました。西区金武地区で作られているのは、今が旬の「カブ」です。ブランド名は「博多かぶ」。この地区の代表的な農作物です。 福岡市中央卸売市場(青果市場)では、年間約24万トンの野菜を取り扱っていますが、このうち福岡市内で生産されているのは、わずか3%。ただ、この「博多かぶ」をはじめとする「カブ」については、取扱量の80%以上を福岡市産が占めています。
市民は「知らない」
福岡市内ではカブ以外にも、様々な野菜が作られていますが、野菜産地としての認知度は高くありません。市内のスーパーで聞いてみると。 記者 Q「カブ」が福岡市産の野菜だというイメージはありますか? 消費者 「福岡市?…そういえばない。ないかも」 「いや、知らなかったです」 卸売市場で高いシェアを占める「カブ」ですが、そもそも食材として選ばれにくいということもあり、主に福岡市内作られている野菜だとは市民の間でも、ほとんど知られていません。
おすすめは「刺し身」と「ステーキ」
博多カブを生産する農家の牛尾邦彦さん(50)によると、畑のすぐ横に川が流れる影響で土が柔らかく、優しい甘さが特徴のカブに育つそうです。葉までおいしく食べられるため、実がきれいでも葉が傷んでいるものは出荷しないほどこだわっていますが、食卓に登場する頻度が低いことが悩みだといいます。 かぶ農家 牛尾邦彦さん 「カブといえば、漬物の食材くらいしか思われていないようですが、食べ方はたくさんあります。『ああ、こういう食べ方もあるんやな』『買ってみようかな』と思われるようになってほしいですね」 牛尾さんおすすめの食べ方は、刺し身。 博多カブを1ミリほどの薄切りにして、ほんの少し、しょうゆをたらしていただきます。 記者 「野菜というより果物を食べているような、サクサクとした食感ですね」 自慢の刺し身をいただいてみると、口いっぱいに、みずみずしい甘さが広がりました。 牛島さんいわく、「小さなお子さんにも食べてほしい。サラダもおすすめですよ」。 もうひとつ、牛島さんに教えていただいたのが、「ステーキ」。厚めに切った博多カブを油をひいたフライパンで焼きつけます。味付けはシンプルに塩コショウで。