「沢の鶴」が震災直後に仕込んだ純米古酒を販売へ 1本10万円で10本限定 売り上げは全額寄付
阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた酒造会社「沢の鶴」(神戸市灘区)は、震災から30年を迎える2025年1月17日に、復興への願いを込め震災の年に仕込んだ「1995年醸造 生酛(きもと)純米古酒」を発売すると発表した。1本10万円(税込・720ミリリットル)で、限定10本。同日午前10時から電話とオンラインショップで注文を受け付け、売り上げは全額、日本財団の「災害復興支援特別基金」に寄付する。 【写真】阪神・淡路大震災で倒壊した、沢の鶴の木造蔵 同社は震災によって、7つあった木造蔵と資料館が倒壊。酒造りの担当者2人が犠牲になった。鉄筋コンクリート造りの蔵は倒れなかったが、タンクが台座から外れ、酒が流出。酒造り再開への道は困難を極めた。 今回販売する商品は1995年3月から手作業で製造を始め、4月にもろみの仕込みに入った。実験的に40日ほどオーク樽に貯蔵、ある程度オークの香りを付けた後、ふたたびタンクに戻して室温10度くらいで約30年間寝かせたという。 当時、入社6年目だった同社の西向賞雄・取締役製造部部長(59)は「震災後、初めてちゃんと仕込めた酒。再び酒造りができる喜びを感じながら造った」と回顧しつつ、「熟成酒は時間とともに計算できない変化をするので、先の味わいは想像できない。だが(今回の商品は)30年で深みが増し、奥行きとまろやかさが加わった」と太鼓判を押す。30年を振り返り、「社員の多くが震災を知らない世代になった。若い社員には、先輩たちがどれだけ苦労して酒を造ってきたかを伝えたいし、子どもたちにも被災体験を話して、備えについて考えていきたい」と話した。 販売は1月17日午前10時から先着順。問い合わせは沢の鶴マーケティング室、電話078-881-4301。
ラジオ関西