ホークス一筋25年、チームを支えるベテラン打撃投手が明かす“打ちやすいボール”とは? 試合前のバッティング練習の本当の目的
打撃投手の仕事は打ちやすい球を投げること
では、具体的に打撃投手の仕事内容について見ていきましょう。 試合前のバッティング練習では、選手たちはイメージと動作にズレがないか、スイング軌道に狂いがないかなど、選手自身でチェックポイントを確認します。 キャンプでは数多くのバッティング練習をすることで、そうした動作や感覚などを私なりに固めていきます。 打撃投手が一定の打ちやすい球を投げることで、そうした確認作業を効率良く進めることができるのです。 では、打ちやすい球とはどんな球なのでしょうか。 工業製品や農作物に「規格」があるように、私たち打撃投手が投げる球にも「規格」のようなものがあるのです。 (1)球速は100キロから110キロの間 (2)球種は垂直方向のバックスピンがかかった直球(フォーシーム) (3)コースの基本はど真ん中(打者がコースを指定する場合もある) (4)投球間隔は、打者の間合いに合わせる これが理想ですが、機械ではないので完璧にはできません。それでも、いつもできるように努力しています。 それぞれ、本職の投手から打撃投手になる時に対応しなくてはいけません。 打撃投手の「常識」として、打撃投手の握りというのがあります。本職の投手のストレートの握りは人差し指と中指をくっつけて縫い目にかけますが、人差し指と中指の間を開いて握ると左右のブレが小さくなるのです。私も先輩から教わりました。 打ちやすい球を投げるのは簡単そうで難しいのですが、何より厄介なのは精神的重圧との戦いです。
試合前に「打ちにくい球」の練習はしない
打撃投手が投げる打ちやすい球を打って、それでバッターにとって練習になるのかと疑問に思う方もいるでしょう。 試合では相手ピッチャーがバッターのタイミングを外したり、的を絞らせないために、球速を変えたり、球質を変えたり、投げる場所、高低・内外を変えたり、投球間隔を変えたりして投げているのだから、それを打てるようにする練習が必要なのではないか。 確かにそういった実戦的な練習もあります。その場合は、打撃投手が投げた球を打つのではなく、現役の投手が投げます。真剣勝負に近い形の練習です。 「フリーバッティング」「シートバッティング」「ライブBP」(※投手の最終調整の意味合いで行う実戦形式の練習)といった練習がそれに当たります。抑えようとするピッチャー、打とうとするバッター、両方にとっての練習です。最近はCS局やネット配信でキャンプの様子が中継されるので、ご存じの方も多いでしょうが、キャンプも中盤になってくると、そういった練習が行われます。 ただ、こうした練習をしたところで一軍の試合で参考になるのかどうかは微妙なところです。いくら実戦形式といっても、同じユニフォームを着ている味方同士では、どこか真剣勝負にはならないところがあります。むしろ、一軍レベルかどうかの参考にしたり、試合出場に向けたステップとして行われる練習といっていいでしょう。 ともかく、試合前のバッティング練習の目的は感覚のチェックが中心で、打ちにくいボールを打つ練習はしません。