夜が明るすぎる光害問題 海を見失うウミガメ、ビルに激突する渡り鳥…死ぬ事例も多数
渡り鳥にも異変
渡り鳥への光害も課題になっている。 北米では毎年、春には北へ、秋には南へと渡り鳥が移動する。渡り鳥は夜空の月や星の光を頼りに移動するが、大都市の上空を通過する途中、明るい照明やビルからの光に引き寄せられる。 例えば、米同時多発テロで崩壊した世界貿易センターを象徴するためにニューヨークでともされる2本の垂直の光の柱「トリビュート・イン・ライト」の周りには、毎年9月11日に点灯後、数分以内に1万5700羽近くが現れるという。 人工の光で方向を見失い、建物の壁や窓に衝突してしまう渡り鳥もいる。最近の研究報告では、米国では建物に衝突して年間10億羽以上の鳥が死んでいる。 毎年約20億羽の渡り鳥が通過するテキサス州では、野鳥保護に携わる「全米オーデュボン協会」の支部が、渡り鳥が移動する春と秋に運動を展開。不要な明かりを消す、照明にタイマーや自動センサーをつけるといった行動を促す。 担当者のクロエ・クラムリーさんは「運動は始まったばかりですが、認知度が高まって変化が見られます」。同州では17の市と三つの郡が、春と秋に庁舎の消灯を義務付ける宣言または決議を可決。同州ヒューストンでは、建物のガラスにフィルムを貼るなど鳥に優しいものに改修する取り組みが進む。
朝日新聞社