早実・清宮がセンバツ初戦で見せた成長と解消できていない弱点
早実が延長戦の末、明徳義塾を逆転で下して1回戦を突破した。注目の清宮幸太郎(3年)は4打数1安打。2点を追う土壇場の9回には、その存在感で明徳義塾のエラーを誘い、四球でチャンスを広げ同点劇につなげた。ネット裏に陣取ったプロ12球団のスカウトが徹底マークしている3年となった清宮に見えた成長と、まだ解消できていない弱点とは何だったのか。 明徳義塾の左腕エース、北本佑斗はネクストバッターズサークルの清宮を意識してしまったという。 「あのピッチャーゴロで終わっている試合だったんだが」。通算48勝の馬淵監督が悔やむ。 9回、1点差に詰め寄り、なお二死一塁で、早実の途中出場、横山優斗は打たされた。打球はワンバウンドで北本のグラブへ収まるかと思われた。だが、北本は打球を弾いた。ふりむき、素手でボールを拾おうとしてまた落とした。試合後、馬淵監督が、「野球の神様がついている」と表現したが、痛恨の失策で清宮になかったはずの5打席目が回ってきたのである。北本は勝負したが、結果的に歩かせることになり、2年生4番の野村大樹が、同点の押し出し四球を選ぶ。こうなると流れは止まらない。延長10回、この試合のラッキーボーイとなった9番打者、野田優人が4打点目となるタイムリーを放ち、“清宮の春”が散ることはなかった。 清宮の4打席を振り返ってみる。 1回一死一塁からの第1打席は初球を打った。外角の126キロのストレートを引っ張ってセンター前へ。強烈な当たりだった。 第2打席は、3回走者なしで、カウント1-1から外角のスライダーをセンターへ打ち上げた。中堅手は、一度、フェンスギリギリに下がったが、打球が風で戻ったのか、1歩、2歩前に出てキャッチした。 第3打席は、6回一死走者なしで、ここも初球。外角の130キロのストレートをポーンと打ち上げ、キャッチャーが、ベンチ前まで追いかけて捕球した。 第4打席は、8回の先頭打者。清宮は、また初球を振った。外角の125キロのストレート。逆方向に押し込む左中間深くに上がった打球は、風に流れたが、下がって守っていたレフトが余裕でキャッチした。 傾向としては初球狙いと逆方向への意識である。 清宮は「全部打ち損じ」「自分も向こうの術中にはまった」と振り返った。 星稜時代の松井秀喜を5打席連続敬遠した馬淵監督が敬遠攻めをしてくるのではないか、という戦前のマスコミ報道もあったため、気持ちが引かないようにファーストストライクを狙ったのかもしれない。また逆方向への打球は、苦手とされる対左投手に対する清宮なりの対策だったのだろう。 元ヤクルトのスカウト責任者だった片岡宏雄さんは、こう見た。 「まず構えが軽くなった。これまでのような力みがなくなっている。バットスイングの速さは相変わらずだしバットの出もやわらかい、ただ苦手な左投手にどう対応するかに注目していたが、そこには課題は残ったままだった」