シリア内戦から3年 混迷深めるシリアの現状は?
6月21日、国連はシリアで緊急に人道支援を必要としている人の数を1,080万人と発表しました。これはシリア人口の約半数にあたります。内戦が始まって3年あまり。シリア情勢は、ますます混迷の度を深めています。
内戦の発端と構図
シリア内戦の背景には、2010年12月のチュニジアでの抗議運動をきっかけとして、中東・北アフリカ一帯に広がった民主化運動「アラブの春」がありました。シリアでも強権的なアサド政権に対する抗議運動が本格化。これにアサド政権が鎮圧で臨むなか、2011年2月頃から武力衝突が発生するようになったのです。 シリアの反体制派は「シリア国民連合」に結集しており、もともとシリアを「テロ支援国家」に指定していた米国をはじめ欧米諸国はこれを支援。ただし、同じ反体制派でもイスラム組織の多くは、リベラル派の多い国民連合と距離を置いています。 アサド政権は隣国イランから支援を受けており、両者はイスラムのシーア派で共通します。冷戦時代からの友好国ロシアも、アサド政権を支持。これに対して、サウジアラビアなど周辺のスンニ派諸国は、スンニ派の反アサド・イスラム勢力を支援してきました。一方でサウジやカタール、トルコなどは、欧米諸国とともに国民連合も支援しています。
調停の行き詰まり
シリアでの戦闘が泥沼に陥っていくなか、2013年8月には化学兵器が使用されました。これをきっかけに、アサド政権への制裁をめぐって安保理で対立していた米ロは調停を加速。ロシアの働きかけでアサド政権は化学兵器の廃棄に合意し、10月には化学兵器禁止機関(OPCW)が、シリアにある化学兵器の関連施設が全て廃棄されたことを確認したと発表。今年7月2日には、イタリアに運ばれていた化学物質の中和作業が最終段階に入ったと報道されました。 その一方で、米ロの合意に基づき、国連の仲介でアサド政権と反体制派が集まる和平交渉「ジュネーブ2」が2014年1月に開催。しかし、「テロとの戦い」を強調するアサド政権と、アサド大統領の退陣を求める反体制派の対立で、結局2月に中断されました。 さらに6月3日には、反体制派との合意に反して大統領選挙が一方的に実施され、アサド大統領が「再任」されました。イランやロシアはこれを支持しており、そのもとでアサド政権はあくまでシリア全土の支配を譲らない姿勢を示したのです。