シリア内戦から3年 混迷深めるシリアの現状は?
シリア分裂の危険
シリアでは5月7日、中部にある第三の都市ホムスから反体制派の多くが撤退。反体制派の拠点だったホムスが政府側の手中に収まったことは、戦闘におけるアサド政権の優位を印象付けました。 しかし、その約1か月後の6月12日、隣国イラクでイスラム組織「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)がバグダッドへの侵攻を開始。イラク北部を制圧したISILは「イスラム国」(IS)と改称し、6月29日にシリアからイラクにかけての一帯でイスラム国家の樹立を宣言したのです。 ISILはもともとアル・カイダ系の組織で、イラクでの戦闘を任されていましたが、方針をめぐって主流派と対立。2012年頃からシリアに越境し、やはりアル・カイダ系武装組織である「アル・ヌスラ戦線」とも衝突しながら、シリア東部の油田地帯で勢力を伸ばしていきました。 イスラム国家樹立の宣言に先立ち、6月24日にアル・ヌスラ戦線がISILに従い、両者は合流。さらに7月3日には、ISがシリア東部デリゾールの主要な油田を全て制圧しました。ISが支配地域を広げることで、イラクだけでなくシリアも、国家そのものが分裂しかねない状況にあるといえます。 さらに、サウジなど周辺スンニ派諸国の支援でアル・カイダ系組織が台頭したことに鑑みれば、ISの勢力拡大はアサド政権に「(外国の支援を受けた)テロとの戦い」を正当化する根拠を与えることにもなり、この点からもシリアをめぐる内外の対立が、より長期化する兆候を見て取れるのです。 (国際政治学者・六辻彰二)