ダフト・パンク解散、松本零士の死を経て、奇跡のコラボ『インターステラ5555』を今こそ再訪すべき理由
世界中で愛され、2021年に多くの謎を抱えたまま解散したフランスの覆面エレクトロニック・デュオ、ダフト・パンク。彼らと映画監督のセドリック・エルヴェ、東映アニメーション、そして『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』などを手がけた日本を代表する漫画家である松本零士によって共同制作されたアニメーション映画で、2003年に公開された『インターステラ5555』の4Kリマスター版が、この度映画館で12月12日より特別上映されることが決定した。 【画像を見る】ヘルメットを外したダフト・パンクの素顔 本作は、2001年に発表されたダフト・パンクの2ndアルバム『Discovery』を劇伴にしたセリフのないアニメーションミュージカルSF映画ではあるが、個々のミュージックビデオとしてカットされたため、映画館で全編を観ることができる機会はこれまで非常に少なかったと言っていいだろう。 本稿では、このタイミングであらためて本作『インターステラ5555』の魅力に迫ってみようと思う。
音楽とアニメ、ジャンルを超えた化学反応
まず、『インターステラ5555』の前提から触れておく。劇伴となっているダフト・パンクのアルバム『Discovery』は、現在でも名盤として語り継がれる作品であり、2001年のリリース時点でさまざまな国のチャートで首位を獲得するなど、商業的な成功も収めた作品だ。ここで興味深いのが、現在よりも影響力の大きかったアメリカの音楽批評メディア、Pitchforkでは『Discovery』に当時(10点満点中)6.4点と極めて厳しいスコアをつけられてはいたが、その後に発表された映画である本作のスコアは8.0点と上昇している点だ(2021年掲載の「Pitchfork Reviews: Rescored」と題された過去作の評価を変更するPitchforkの記事では『Discovery』を6.4点から10点満点へとスコアを修正している)。 Pitchforkがはじめ『Discovery』に6.4点をつけた理由はもちろん記事にいろいろと綴られているが、その一つをざっくりと要約するのなら「歌詞が稚拙」ということになるだろう。しかし、『インターステラ5555』では、そんな歌詞を含んだ音楽がセリフの代わりとなり、物語を進める語り手とも呼べるものになっている。つまり、そうした歌詞に対する批判的な見方は本作の映像によって払拭されていると言っていいだろう。 『インターステラ5555』劇場公開を記念して、松本零士によるイラストを採用した『Discovery』日本盤アートワークを復刻し、ステッカーやダフト・クラブ・カードなどを同梱した完全数量限定盤『Discovery: Interstella 5555 Edition』が12月13日にリリースされる 加えて、ダフト・パンクのインタビューを読んでみると、そもそも『Discovery』を制作した際、彼らは音楽を視覚的に捉えており、映像制作を前提にしていたことがわかる(彼ら幼少期からお気に入りの作品で大きな影響を受けた『宇宙海賊キャプテンハーロック』の作者である松本零士に連絡を送り、はじめは返事がなかったものの、遅れて松本零士から連絡が返ってきたことで実現したコラボレーションだったとも語られている)。 要するに、『インターステラ5555』の魅力の核はそこにある。かたや音楽、かたや漫画/アニメーションという形で表現活動を行うダフト・パンクと松本零士、その両者のクリエイティビティがどのような化学反応を起こしているのか、という点だ。 というわけで、以降はそういった視点から『インターステラ5555』の内容にも踏み込んでみよう。すでに公開から長い時間の経った作品ではあるが、これから劇場で初めて観るという方はネタバレを含むのでご注意いただければ幸いだ。