ダフト・パンク解散、松本零士の死を経て、奇跡のコラボ『インターステラ5555』を今こそ再訪すべき理由
レトロフューチャリスティックなときめき
今回上映されるバージョンでは、オープニングはダフト・パンクの2人に挟まれてインタビューに応える松本零士の発言を切り取った印象的な場面から始まる。詳細については劇場でご確認いただくとして、そこでわかることは、まず両者はお互いをリスペクトしていたということだ。シーンが切り替わり、幕を開ける『インターステラ5555』は、それを証明するように音楽と映像が互いを補い合い、不可分な存在として展開していく。 『Discovery』の収録順に流れていく曲と共に進むストーリーのあらすじをざっくりとさらっておこう。 青い肌のヒューマノイドが住む未知の惑星で演奏するバンドが、突如飛来した地球人に拉致されてしまう。記憶を差し替えられたバンドは地球でヒット曲を産むための機械のように働かされるが、バンドを追って地球に辿り着いた(バンドのベーシストであるステラに憧れる青年ヒューマノイド)シェプの助力によって脱出。しかしシェプはバンドの脱出の際に追っ手から致命傷を負わされ帰らぬ人となってしまう。それでもバンドは力を合わせ黒幕を打倒し、記憶を取り戻したバンドは故郷である星に戻り見事な演奏を披露。未知の惑星と地球人の友好的な関係も築かれる。 比喩的にレコード会社の体質や音楽業界にある慣習を批判しながら進むこのストーリーは、比較的シンプルと呼べるものだろう。しかし、音楽とシンクロして切り替わる映像や場面のムードはもちろん、何よりダフト・パンクの過去に忘れ去られたものから新しい魅力を引き出すスタイル(『Discovery』にはウーリッツァー社のキーボードなど当時の時点で古い部類の機材が使用されている)と、松本零士のレトロフューチャリスティックな作風が混じり合うことで、ロマンやときめきに満ちた映画となっているのだ。 例えば、エドウィン・バードソングによる1979年の楽曲「Cola Bottle Baby」をサンプリングし、チープで弾力のあるサウンドが特徴的な「Harder, Better, Faster, Stronger」が流れる際、松本零士が乗せるのはオートメーションの機械が手際よくヒューマノイドの記憶を差し替えていく映像だ。それはまさに、ダフト・パンクが過去を生き生きと蘇らせ、松本零士がかつて人々が夢見た未来を具現化した瞬間の一つと呼べるだろう。『インターステラ5555』にはそんな瞬間が数えきれないほど存在するのだ。 ダフト・パンクはすでに解散し、松本零士も昨年この世を去っている現在、日々音楽は大量にリリースされ、同時にそれを映像と組み合わせたMVも数多く目にするが、ここまで高い次元で、それもアルバム全編を通してそれを成し得た作品はどれほどあるだろうか。あたらめて書いておくが、今回はそんな『インターステラ5555』を、しかも劇場の音響とともに楽しめる貴重な機会だ。ぜひ劇場まで足を運んで欲しい。 ちなみに今回の特別上映では、スパイク・ジョーンズの手がけた「Da Funk」、ミシェル・ゴンドリーの手がけた「Around the World」などダフト・パンクの象徴的なMVのいくつかが初めて劇場上映される。視覚的な表現の可能性を信じてきたダフト・パンクとそれに応えた映像作家のコラボレーションがいかに結実しているのか、『インターステラ5555』を鑑賞した後であればより深く楽しむことができるだろう。 --- ダフト・パンク&松本零士『インターステラ5555』 日程:2024年12月12日~12月15日(劇場によっては2日限定) ダフト・パンク&松本零士『インターステラ 5555』劇場公開記念トークイベント 日時:2024年12月12日(木)19:00~トークイベントを開催後、本編上映 ※トークイベントは19:30からの本編上映の回をご鑑賞される方がご覧になれます 会場:TOHOシネマズ 日比谷 ゲスト: 清水慎治(東映アニメーション顧問、プロデューサー) 杉山民之(ユニバーサル ミュージック合同会社) 進行役:油納将志(音楽ライター、British Culture in Japan編集者) チケット販売:12/10(火)の24時(12/11の深夜0時) チケット購入:TOHOシネマズ 日比谷HPにて
Daiki Takaku