消えた巨星「トランス・ワールド航空」 96年墜落事故と自由化の波に呑まれた栄光の終焉を振り返る
悲劇が引き起こした名声の失墜
TWAにとって、最悪の瞬間が訪れたのは1996年7月17日のことだ。 ニューヨークからパリへ向かっていたTWA800便のB747が電気回路のトラブルを起こし、ニューヨーク近海で空中分解してしまった。この事故により、乗員乗客230名が亡くなり、TWAの名声は失墜した。 その後、2001年4月には3度目の経営破綻を迎え、アメリカン航空が救済に名乗り出てTWAを吸収することになった。大西洋を中心に名をはせ、多くの新鋭旅客機の開発に関わってきた名門TWAは、2001年12月1日に運行を停止した。 アメリカン航空はTWAの主要ハブであったセントルイス空港をしばらくの間拠点として利用していたが、2009年にはハブ空港としての運用を終えた。
TWA遺産の象徴
規制緩和前の米国航空業界を代表するTWAは、消滅から20年以上が経過した今でも多くの遺産がある。特に有名なのが、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港にあるTWAホテルだ。 この建物はかつてTWAの大西洋線が多く発着した第5ターミナルで、近未来的なデザインから20世紀後半の米国を象徴する名建築として知られている。名作映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』にも登場し、米国文化を彩ったこの建物は、TWAの倒産後、新興航空会社ジェットブルーの拠点として利用された後、ホテルとして改装された。 ホテル内には、滑走路を望む屋上プールやスイートルームなど、空港ならではの旅情あふれる設備が整っており、TWAのロゴ入りグッズが多数販売されているショップも存在する。これにより、多くの乗客がTWAで旅立った歴史が色濃く残る場所となっている。 また、ハワード・ヒューズが開発に大きく関わったロッキード・コンストレーションもTWAの歴史的な遺産のひとつだ。TWAの躍進のきっかけとなったこの機体は、TWAホテルをはじめ、各地の博物館に保存されており、レシプロ機黄金時代の名残を今に伝えている。