高校時代から意識した大衆性、かつ深化もさせたい――Mrs. GREEN APPLEが向かう「ふたつの軸の理想像」 #なぜ話題
令和の時代の「国民的バンド」は誰か? 今、そう問われて真っ先に名前があがるのがMrs. GREEN APPLEだ。「ダンスホール」や「ケセラセラ」など多くのヒット曲を世に送り出し、リリースした楽曲の総再生数は68億回を突破。昨年末には「第65回 輝く!日本レコード大賞」で日本レコード大賞を受賞、「第74回NHK紅白歌合戦」に初出場と、大きな飛躍を遂げた。なぜ彼らは成功を手にしたのか。(取材・文:柴那典/撮影:まくらあさみ/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
結成当時から大衆に届けたいという理想があった
すべての楽曲の作詞・作曲を手掛けバンドを率いる大森元貴(ボーカル/ギター)は、「結成当時から大衆に届けたいという理想は前提としてありました」と言う。結成は11年前の2013年。当時の大森は16歳の高校2年生だったが、まだ何者でもなかったその頃から、華々しく活躍する将来像をはっきりと思い描いていた。 中学の同級生として大森に出会った若井滉斗(ギター)は「元貴の中にはその頃から明確なビジョンがちゃんとあった。達観してるというか、人とは違う何かを当時から持ち合わせていました」と振り返る。大森に声をかけられ加入した3つ年上の藤澤涼架(キーボード)は「誘われた時に『僕とバンドを一緒にやれば99%メジャーデビューできるから』って言われたのは印象に残ってます」と語る。昨年にはテレビ地上波で彼らの冠バラエティー番組もレギュラー放送されたが、そのことも実現させたい夢のひとつとして結成当初に話し合っていたという。 昨年末のレコード大賞と紅白の体験を大森は「楽しかったし、誇らしかった2日間」と振り返る。10代の頃に思い描いていたように、テレビの向こう側の大衆に向けてヒットソングを届けていた。
間口の広さと奥行きは両方必要
ただ、それと時を同じくして、彼らはもうひとつの挑戦に取り組んでいた。それが昨年12月から今年3月まで行われた全13都市22公演のファンクラブ限定ホールツアー「Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”」だ。そこで彼らが見せたのは、通常のライブとは全く異なる、ミュージカル仕立てのパフォーマンス。大勢のキャストとともに、歌と演奏、そして華麗なダンスを軸に、孤独な青年を主人公にした物語を音楽劇として描いた。ロックバンドという枠組みを全く感じさせない、総合芸術としてのエンターテインメントで彼らが見せたのは、自分自身と深く向き合うような内省的な表現だった。 なぜ彼らは多忙を極めるタイミングで新たな取り組みに挑んだのか。「僕がこの構想を練ったのが去年の夏ごろだったので、まだレコ大も紅白もわからない状態だったんです。でも、年末にいろんな番組に出させていただいているなかで、こういうかなりインナーで挑戦的なライブを回っていたら、頭がおかしくて面白いんじゃないかと、無理を承知でそこに突っ込んでいった感じです」と大森は言う。