ダルビッシュ 開幕スタートの裏にあったリスクマネジメント術
レンジャーズのダルビッシュ有投手(27)が4月11日にアストロズ戦に先発し、8回1安打無失点。勝ち星こそつかなかったが、5回までパーフェクトピッチング。5者連続を含む9奪三振の快投をみせた。 先のレイズ戦(4月6日)でも先発し、今季初勝利(7回7安打、無失点)をマークしている。今季は球数を少なくして、長いイニングを投げることを一つのテーマとしているが、2試合ともに、そのイメージ通りの投球ではなかったか。 「出来過ぎじゃないか」レイズ戦のあと、ダルビッシュはそう振り返ったものの、内容に加え、ここに至る過程を考えれば、そんな思いも当然だろう。なにしろ、今季の初登板は3月16日以来、21日ぶりのマウンドだったのである。 順調にスプリングトレーニングを過ごしてきたが、開幕が視界に入ってきた3月20日、寝違いによって、その後の予定が白紙になった。本人は当初、「2~3日で大丈夫」と話していたものの、なかなか回復せず、開幕前の最後の登板だった26日のマリナーズ戦も見送ることとなっている。 深刻な空気が漂ったのは、25日のこと。ジョン・ダニエルズGM(ゼネラルマネージャー)が、「明日、ダラスで精密検査を受けさせる」と発表すると、昨年痛めた、腰の神経障害との関連も取り沙汰された。もしそうだとしたら、長期離脱も可能として否定できない。幸い、検査の結果、骨や筋肉には異常が見られず、29日にキャッチボールを再開。さすがに決まっていた31日の開幕投手は回避したものの、その状態から4月6日の先発に間に合わせたのだから、驚異的な回復をみせたと言える。 それまで、キャンプでの表情は、過去2年と比べても、明るかった。その理由は昨季終盤に苦しんだ腰の痛みから解放されたことも大きかったよう。「1月の中旬ぐらいまでは、違和感があるというか、なかなか回復しなかった」ものの、「2月に(暖かい)ハワイに行ってから、よくなった」そうだ。 球団からは、『重いウェイトはやめろ』などと制限を受け、「それに関しては、ずっとやってきたので戸惑いもあった」と話す一方、「それを理解して、プラスに捉えるようにしたらよくなった」とも明かしている。 そのあとしかし、まさかの寝違い。好事魔多しとは、まさにこのことか。もっとも、ダルビッシュの表情が明るかったのは、そうした回復の手応えに加え、腰の痛みを引き起こす原因に辿り着いたからでもあったよう。 ダルビッシュは言った。「姿勢が悪かったというのがある」 それは、日常生活のことか? と問われると、頷いている。「普通の生活とかですね。姿勢がちょっと悪かったので、それは自分でも感じていたことですし、そのまま動いちゃうと、やっぱり来るかなっていう」 意外な話だったが、それを彼が明かしたことも意外だった。結局、その結果を受けて、姿勢が矯正できるような、あるいは、腰に負担のかからないようなエクササイズを始めたのだという。「疲れてくると(姿勢が)悪くなるから、いろいろな腰回りのエクササイズをしてから、グラウンドに出て行く。今年は、そうなっていくかなと思います」 その時点ではまだ、「全く機能してなかった部位を刺激するトレーニングを初めて2ヶ月だから、移動が続いたりすると、固くなったりするかな」と、どこか不安を覗かせていたが、開幕までには、という思いも透けていた。