名前が話題の台湾野球選手、本来の読み方に想い
各部族名についても政府につけられた9つの族名ではなく、自分たちの本来の族名を回復する運動が広がった。現時点で公式に認定された民族数は16民族に増え、現在も族名の回復や認定手続きが続いている。 台湾原住民族の個人名も1994年から戸籍に伝統名を登録できるようになった。しかし、登録は中国語の漢字で登録しなければならないため、実際に登録されたのは伝統名の「当て字」にすぎなかった。 そのため、ギリギラウ選手も自分の名前を「吉力吉撈・鞏冠」という本来の発音とは異なる漢字で表記せざるを得なかった。原住民族は中国語の当て字ではなくアルファベットを用いて本来の正しい発音を登録できるようにも訴えて続けてきた。そして2024年5月の法改正によって、ようやく戸籍上に伝統名をアルファベットのみで登録できるようになった。
制度上は伝統名を回復できるようになったが、社会に浸透するにはなおも高い壁が立ちはだかる。台湾の政府統計によると、2012~2018年までに伝統名の回復を申請した人数は、原住民族の5%しかいなかった。差別を受ける恐れや周囲に迷惑をかけたくないとの気持ち、手続きが面倒、漢名に慣れてしまったなどの理由で、多くの原住民族は漢名のままで生活を送ることを選んでいる。 日本プロ野球でも活躍してきた郭泰源氏、陽岱鋼氏、宋家豪氏、古林睿煬氏などの台湾出身選手も原住民族である。ただ、漢名であることもあり、日本では彼らが原住民族であることはあまり知られていない。そして彼らの伝統名は日本だけではなく、台湾でもほとんど知られていない。
■社会の壁に立ち向かうギリギラウ選手 今の台湾社会でも伝統名を回復した原住民族はしばしば「変な名前」、「意識高い」という眼差しを浴びせられる。11月16日に行われた日台戦の翌日(17日)、台湾メディアはギリギラウ選手に名前が日本で話題になったことについて質問した。ギリギラウ選手はカメラに向けて明確に自身の名前の呼び方について「ギリギラウ・コンクアン(giljegiljaw kungkuan)」と2回発音した。