初の国内メジャーを完全優勝で飾った桑木志帆のドライバースウィングをAIで分析
そして、トップから切り返しのアバターのハンドパス(手の軌道)に注目すると、バックスウィングとダウンスウィングで手がほぼ同じ軌道を通っているのがわかります。桑木選手のコーチをしている中村修プロに実際にお話を伺った際に、「トップから切り返しにかけてのキネマティックシークエンス(動きの順番)である横移動→回転→伸展が、スムーズにできているかは常にチェックしている」とのことでしたが、桑木選手のように切り返しで捻転差が保たれていると、その動きの順番がスムーズにできているか否か? の良いチェックになります。 切り返しのアバターの比較で、左は一般アマチュアの例、右は桑木選手ですが、捻転差がマイナス28度と既に減少しているアマチュアは、ハンドパスが前に出てアウトサイドイン軌道になっていますが、捻転差を保って切り返している桑木選手は、ハンドパスが前に出ずにバックスウィングと同じ軌道を通っています。桑木選手の持ち球はパワーフェードですが、その秘訣は切り返しを下半身から順番に始動して捻転差が保たれた結果、アウトサイドイン軌道ではなくプレーンに沿って手とクラブが下りてくるので、スライスではなく球がつかまったパワーフェードが打てるのでしょうね。
ホールによってドロー・フェードの打ち分けをせず、得意な球で攻める強さ
最後にフェードヒッターの桑木選手らしいエピソードを1つご紹介します。私が中村プロと「伊藤園レディス」の試合中について歩くと、あるホールのティーショットで左前に木が迫り出していて、「フェードヒッターには打ちにくそうだな」と感じる場面がありましたが、桑木選手はティーイングエリアの真ん中に立って、平然と木のスレスレから得意のフェードを打っていました。 中村プロによると「持ち球のフェードの曲がり幅をコントロールしながらでコースマネジメントを組み立てている」とのことでしたが、左前に木が迫り出した狭いターゲットラインに対して、右に立つこともなく迷いなくスレスレを打っていくフェードの精度と、自信に満ちたスウィングが非常に印象的でした。 左前に木がが立ち並んでいると「右からドローで打ちたい」と思いがちですが、桑木選手のように「曲がり幅をコントロールした持ち球で攻める」コースマネジメントは、ゴルフをなるべくシンプルに組み立てる上で、アマチュアの方にも大いに参考になるでしょう。 今回は、桑木 志帆選手のスウィングを解説させていただきました。コーチを務める中村プロと試合を観戦した桑木選手が、最終戦の国内女子メジャーに優勝して個人的にも非常に嬉しい勝利でした。桑木選手の来シーズンの活躍に期待しましょう!
北野達郎