観月ありさ”井伏愁”の悲しすぎる過去とは? ドラマ『オクラ~迷宮入り捜査~』第9話レビュー。突如浮上した黒幕候補を考察
愁が背負う深い罪と苦しみ
さらに、飛鷹と愁の過去も深堀りされていく。当初、愁が飛鷹に近づいたのは彼が結城真一(平山祐介)から託された“チップ”が目的だった。 一緒に過ごすなかで次第に飛鷹に惹かれていくが、幸せな気持ちが増えていくほどに実感するのは自らの罪の重さだ。お腹の子どもを何者かの画策によって失われたときでさえ、大勢の人を傷つけた罰だと考えてしまうほどだ。 仲がいいのにも関わらず飛鷹と別れたのは、子どもを失ってもまだ幸せでいられる自分がつらかったから。飛鷹の捏造に協力することは、愁にとって“贖罪”だった。未解決事件の被害者や遺族の悲しみを知ることで、苦しみながらも自分の罪の大きさと向き合ってきた愁。痛ましい過去と消せない罪を背負いながらも明るく振る舞っていた彼女の胸中は、とても計り知れない。 サイボーグのように感情をなくし、殺人をもためらわなかった彼女が変わったのは飛鷹の存在があったから。そして、結城を亡くした飛鷹の心の傷を癒したのは、ほかでもない 愁である。 お互いを補い合うような飛鷹と愁の関係性は、役者として同じ時代を戦ってきた戦友でもある反町と観月だからこそ出せた空気感。それだけに、愁が警視庁を出た直後に狙撃される悲痛な展開には思わず目を覆ってしまった。
物語が始まる新たな波乱
10年前の警察官連続爆破事件の実行犯は愁だが、加勢英雄(中村俊介)殺害の真犯人は別にいる。 現在最も黒幕に近しい人物として挙げられるのは、オクラの室長・幾多学(橋本じゅん)だろう。ラストシーンでは、愁を狙撃した犯人を追う不破利己(杉野遥亮)がライフル銃を所持した幾多と対峙する。現行犯ではないため彼が狙撃犯である可能性は半々といったところだが、十分に疑うべき人物であることは間違いないだろう。 また、突如物語に浮上した加勢の後任・尾瀬義郎(松角洋平)管理官も怪しい。人物像があまり明瞭でないことに加え、これまでくせ者扱いされてきた「オクラ」に協力的であることもなんだか裏があるような気がしてならない。 次週第10話では、オクラのメンバー全員が取り調べを受けることに。毎話視聴者の驚きをかっさらっていくが、いまだ登場人物のほとんどに黒幕の可能性があり、まだもう一段階大きな波が待ち受けているのではとひやひやしている。 不破や志熊にとっては警察への不信感が募る展開だが、警察の闇を取り除いてくれるのはきっと彼らのような若手刑事だろう。2人の活躍にも期待しながら、次週を心待ちにしたい。 ------------------------------ 【著者プロフィール:西本沙織】 1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
西本沙織