岐路に立つ能登の芸術祭 常設作品が多数被害、絆励ましに
石川県珠洲市で2017年に始まった「奥能登国際芸術祭」が岐路に立たされている。常設作品の半数以上が能登半島地震の被害を受け、芸術祭を機に移住してきた若者も人生設計の見直しを迫られた。次回は見通せないが、アートで生まれた絆が人々の励ましにつながっている。 現代美術品が並ぶ「スズ・シアター・ミュージアム」の壁にも多くの亀裂が。金沢市在住のアーティスト山本基さん(57)の「記憶への回廊」も倒壊した。 山本さんは最大震度7と聞いた瞬間に作品は駄目だと悟ったが、「それより芸術祭に関わってくれた珠洲の人々が心配でならない」と思いを語る。 「芸術祭の仕事も頑張りたかったけど、バリンと割れてしまった」。17年に埼玉県から移住し、運営に関わる鹿野桃香さん(29)は、そう話す。「ここに住み続けたいと前向きに語れないほどの命の危険を感じた」 鹿野さんは被災後の能登でアートをどう生かすか思いを巡らすようになった。「地域の人の気持ちを和らげたり、地震を離れて夢を見せたりできるかもしれない。引き裂かれたつながりを縫い直したい」