2016年「化学賞」は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想
2016年のノーベル賞発表が迫っています。10月3日の生理学・医学賞を皮切りに、4日には物理学賞、5日化学賞と自然科学3賞を発表。平和賞は7日、経済学賞は10日です。日本科学未来館では、毎年、科学コミュニケーターが今年の受賞にふさわしい研究者を紹介しています。 【中継予定】ノーベル医学生理学賞に東工大・大隅良典氏 午後8時めど会見
幅広い領域が対象となり予想は難しい
自然科学3賞の発表は毎年、化学賞が最後になります。生理学・医学賞と物理学賞の余韻の中で化学賞を迎えるわけです。1987(昭和62)年の利根川進博士以降、自然科学3賞の日本人受賞は2000年までありませんでした(文学賞は1994年に大江健三郎氏が受賞)。2000(平成12)年10月、今年も日本人はないのかなという半ばあきらめに近い思いで迎えた日に、白川英樹氏に化学賞を贈ることが発表されました。以降、2012年まで3年連続の日本人受賞となり、3年とも化学賞が含まれています。 分野が広すぎて予想が難しいとされる化学賞ですが、今年はどんなテーマが選ばれるのでしょうか? 科学コミュニケーターが選んだ3つの研究を紹介します。 化学賞は物理学賞のように規則的な傾向があるわけではありません。また、「化学」という分野自体が幅広く、それを反映してノーベル化学賞も非常に多彩です。昨年の「DNA修復のメカニズムの研究」は生理学・医学賞で受賞してもおかしくないですし、一昨年の「高解像度蛍光顕微鏡の開発」は、物理学の色合いが強いです。この守備範囲の広さから、受賞の予想をするのは非常に難しいのですが、あえて化学賞らしい化学の研究から、このお三方が受賞すると予想したいと思います。
■自己組織化分子システムの創出と応用
藤田誠(ふじた まこと)博士 《分子が分子をつくる》 藤田博士は、「自己組織化分子」という研究の開拓者として化学界をリードしています。特に2013年に発表された「結晶スポンジ法」に関する研究は圧巻でした。いったいどんな研究なのでしょうか。 【自己組織化分子とは?】 互いにくっつくことのできる小さな分子やイオンを「適切な環境」におくと、意思をもっているかのように集まって、その環境での最適な形をとります。バラバラだった分子やイオンが、秩序のある、より大きな分子へと組み上がっていくのです。これを「自己組織化」といいます。藤田博士は、素材となる小さな分子やイオンの性質を見極め、自己組織化という方法で大きな分子をくみ上げる手法を提唱・実践したのです。